※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

[全文公開] 資料 法人税基本通達等の主要改正項目について(3年6月25日)

( 64頁)

令和3年6月25日付課法2-21ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)による主な改正点は,次のとおりです。

第1 法人税基本通達関係

1 会社法等の改正(取締役の報酬等に関する規律)に伴う整備

取締役の報酬に関する規律の見直し等を目的とした会社法の改正並びに同改正を受けた会社計算規則の改正及び会計における実務対応報告の公表を受け,取締役の報酬等として出資の履行を要しないで交付される特定譲渡制限付株式についての役務提供費用の額はその特定譲渡制限付株式の交付時等の価額に相当する金額とされ,事前交付型の株式報酬に係る資本金等の額の増加額について当期までに費用に計上された交付株式に係る役務の提供額に相当する金額とされるなどの整備が行われました。

○ 退職給与に該当しない役員給与(基通9-2-27の2 新設)

役員の将来の所定の期間における役務提供の対価として譲渡制限付株式又は譲渡制限付新株予約権が交付される給与であって,役務提供を受ける法人においてその期間の報酬費用として損金経理が行われるようなものは,その役員において所得税法上の退職手当等に該当するものであっても,退職給与には該当しないことを明らかにしています。

2 特定公益増進法人に対する寄附金の特別損金算入限度額の見直し

特定公益増進法人に対する寄附金の特別損金算入限度額の計算の対象となる寄附金から出資に関する業務に充てられることが明らかなものが除外されました。

○ 出資に関する業務に充てられることが明らかな寄附金(基通9-4-7の2 新設)

出資に関する業務に充てられることが明らかな寄附金とは,次のようなものが該当することを明らかにしています。

(1) 寄附金の使途を出資業務に限定して募集されたもの

(2) 出資業務に使途を指定して行われたもの

第2 租税特別措置法通達関係

1 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(改正)

一般試験研究費の額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制について,基準年度比売上金額減少割合が2%以上である場合の税額控除の上限を引き上げるとともに,税額控除割合の見直し等のほか,制度の対象となる試験研究費の額について次の見直しが行われました。

(1) 試験研究のために要する費用の額で研究開発費として損金経理をした金額のうち,棚卸資産若しくは固定資産(事業の用に供する時において試験研究の用に供する固定資産を除きます。)の取得に要した金額とされるべき費用の額又は繰延資産(試験研究のために支出した費用に係る繰延資産を除きます。)となる費用の額が追加されました。

(2) (1)の見直しに伴い,(1)の固定資産又は繰延資産の償却費,除却による損失及び譲渡による損失の額が除外されました。

(3) (1)の見直しに伴い,当該事業年度の収益に係る売上原価,完成工事原価その他これらに準ずる原価の額が除外されました。

(4) 新たな知見を得るため又は利用可能な知見の新たな応用を考案するために行う試験研究に該当しない試験研究のために要する費用の額が除外されました。

○ 試験研究の意義( 措通42の4(1)-1  新設)

製品の製造又は技術の改良,考案若しくは発明に係る試験研究とは,事物,機能,現象などについて新たな知見を得るため又は利用可能な知見の新たな応用を考案するために行う創造的で体系的な調査,収集,分析その他の活動のうち自然科学に係るものをいい,新製品の製造又は新技術の改良,考案若しくは発明に係るものに限らず,現に生産中の製品の製造又は既存の技術の改良,考案若しくは発明に係るものも含まれることを明らかにしています。

○ 試験研究に含まれないもの( 措通42の4(1)-2  新設)

製品の製造又は技術の改良,考案若しくは発明に係る試験研究(新たな知見を得るため又は利用可能な知見の新たな応用を考案するために行うものに限ります。)に該当しないものとして,人文科学及び社会科学に関する活動又はリバースエンジニアリング(既に実用化されている製品又は技術の構造や仕組み等に係る情報を自社の製品又は技術にそのまま活用することのみを目的として,当該情報を解析すること)などを例示することとしています。

○ 研究開発費として損金経理をした金額の範囲( 措通42の4(1)-3  新設)

上記1(1)の研究開発費として損金経理をした金額には,研究開発費の科目をもって経理を行っていない金額であっても,法人の財務諸表の注記において研究開発費の総額に含まれていることが明らかなものが含まれることを明らかにしています。

2 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(改正)

給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除について,次の見直しが行われました。

(1) 法人が給与等の引上げ及び設備投資を行った場合に係る措置が改組され,青色申告法人が,令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内新規雇用者に対して給与等を支給する場合において,その事業年度において次の①の要件を満たすときは,その法人のその事業年度の控除対象新規雇用者給与等支給額の15%(その事業年度において次の②の要件を満たす場合には,20%)相当額の税額控除ができる措置とされました。

  • ① その法人の新規雇用者給与等支給額からその新規雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその新規雇用者比較給与等支給額に対する割合が2%以上であること。

    ② その法人のその事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額からその比較教育訓練費の額を控除した金額のその比較教育訓練費の額に対する割合が20%以上であること。

(2) 中小企業者等が給与等の引上げを行った場合に係る措置について,「継続雇用者給与等支給額からその継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が1.5%以上であること」との要件について,「雇用者給与等支給額からその比較雇用者給与等支給額を控除した金額のその比較雇用者給与等支給額に対する割合が1.5%以上であることとの要件」とすること,税額控除割合を乗ずる基礎となる金額である,「その雇用者給与等支給額からその比較雇用者給与等支給額を控除した金額」について,その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額のうち雇用調整助成金等の額を給与等の支給額から控除して計算することなどの見直しが行われました。

○ 他の者から支払を受ける金額の範囲( 措通42の12の5-2  改正)

給与等の支給額から控除するその給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額とは,次に掲げる金額をいうことを明らかにしています。

(1) 補助金等の要綱,要領又は契約において,その補助金等の交付の趣旨又は目的がその交付を受ける法人の給与等の支給額に係る負担を軽減させることであることが明らかにされている場合のその補助金等の交付額

(2) (1)以外の補助金等の交付額で,その算定方法が給与等の支給実績又は支給単価を基礎として定められているもの

(3) 出向元法人が出向先法人から支払を受けた給与負担金の額

○ 雇用安定助成金額の範囲( 措通42の12の5-2の2  新設)

上記2(2)の雇用調整助成金等の額とは,次に掲げるものが該当することを明らかにしています。

(1) 雇用調整助成金,産業雇用安定助成金又は緊急雇用安定助成金の額

(2) (1)に上乗せして支給される助成金の額その他の(1)に準じて地方公共団体から支給される助成金の額

3 株式等を対価とする株式の譲渡に係る所得の計算の特例(新設)

法人が,その有する株式を発行した他の法人を株式交付子会社とする株式交付によりその株式を譲渡し,その株式交付に係る株式交付親会社の株式の交付を受けた場合(その株式交付により交付を受けた株式交付親会社の株式の価額がその株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうちに占める割合が80%に満たない場合を除きます。)には,その譲渡した株式の譲渡損益のうちその交付を受けた株式交付親会社の株式に対応する部分の計上を繰り延べる制度が創設されました。

○ 株式の占める割合が8割以上となる場合の本制度の適用(措通66の2の2-1 新設)

本制度は,法人が任意に選択できるものではないため,株式交付により交付を受けた株式交付親会社の株式の価額が当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうちに占める割合が100分の80に満たないかどうかの判定(以下「8割要件の判定」といいます。)において,その割合が100分の80以上となる場合には,その譲渡した株式の譲渡損益のうちその交付を受けた株式交付親会社の株式に対応する部分の計上を繰り延べることになることを明らかにしています。

○ 株式の占める割合の判定等における株式交付親会社の株式の価額(措通66の2の2-2 新設)

8割要件の判定及び株式交付割合の算定における株式交付親会社の株式の価額は,原則として当該株式交付の日における価額をいうが,8割要件の判定における株式交付親会社の株式の価額は,課税上弊害がない限り,株式交付計画書に定められた算定方法における算定基準日の株価を基礎として合理的な手法により算定される価額によることができることを明らかにしています。

○ 1株未満の株式の譲渡代金を交付した場合の株式の占める割合の判定等(措通66の2の2-3 新設)

8割要件の判定及び株式交付割合の算定に際して,当該株主に交付された金銭がその株式交付に際して交付すべき株式交付親会社の株式に1株未満の端数が生じたためにその1株未満の株式の合計数に相当する数の株式を他に譲渡し,又は買い取った代金として交付されるものであるときは,その交付された金銭が実質的に当該株主に対して支払う株式交付の対価であると認められるときを除き,当該株主に対してその1株未満の株式に相当する株式が交付されたものとして,8割要件の判定をし,又は株式交付割合の算定をすることになることを明らかにしています。

4 対象純支払利子等に係る課税の特例(改正)

控除対象受取利子等合計額の計算において,法人が支払を受ける公社債投資信託の収益の分配の額のうち公社債の利子から成る部分の金額を受取利子等の額の合計額に加えることができることとするなどの見直しが行われました。

○ 公社債の利子から成る部分の金額(措通66の5の2-19 新設)

控除対象受取利子等合計額の計算における受取利子等の額の合計額に加えることとされた公社債の利子から成る部分の金額とは,法人が支払を受ける公社債投資信託の収益の分配の額の内訳書において公社債の利子であることが確認できる金額のみをいうことを明らかにしています。