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[全文公開] 医療従事者応援金とトンネル寄附

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新型コロナウイルス感染症への対応に最前線で奮闘する医療従事者を応援するため,地方公共団体が募集した寄附金を原資として医療機関に“応援金”を支給する制度がある。応援金は,医療機関から医療従事者に特別手当等として支給される。トンネル寄附に該当すると考える向きもあるが,この応援金は,寄附者の意思で特定の医療機関等に交付されるものではないため,所得税の寄附金控除等の対象になる。

「国又は地方公共団体に対する寄附金」は,所得税で特定寄附金として寄附金控除,法人税で全額損金算入の対象とされている( 所法78 ①,②一, 法法37 ③一)。ふるさと納税にも該当するため,個人住民税の寄附金税額控除の対象だ( 地法37の2 ①等)。しかし,寄附者から国等を迂回して特定の団体に交付される場合は,トンネル寄附と呼ばれ,「最終的に国等に帰属しない寄附金( 所基通78-6法基通9-4-4 )」として寄附金控除等の対象外となる。

この点,応援金の原資として地方公共団体が募集する寄附金は,地方公共団体から医療機関等に交付される流れではあるものの, 寄附者の意思 で特定の医療機関等に交付される仕組ではない。医療機関から提出を受けた医療従事者への手当支給計画書等に基づき,地方公共団体自らその支給先を決定する仕組であるため,寄附者から地方公共団体を迂回して特定の団体に交付されるものとはいえないことになる。寄附者と地方公共団体,医療機関等の三者は紐づいておらず,あくまで「寄附者から地方公共団体への寄附金」と「地方公共団体から医療機関等への応援金」に区分された取引であり,トンネル寄附には該当しないわけだ。

なお,応援金に係る寄附を募集していた茨城県によると,6月25日時点で,申込件数は1,906件,申込金額は約4億7,800万円にのぼるという(6月30日で受付終了)。