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[全文公開] 雑損控除の対象となる自動車

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今般,静岡県などに被害をもたらした豪雨災害により被災された皆様に,心よりお見舞い申し上げます。

災害等により自動車やバイクなどの車両に損害を受けた場合,その車両が生活に通常必要であると認められれば,雑損控除の適用で所得税額を軽減することができる。生活に通常必要な車両かどうかは,災害等発生直前における保有目的,使用状況等を総合勘案して判断すべきという。

雑損控除とは,災害や盗難などにより生活に通常必要な資産に受けた損失額のうち,一定額を総所得金額等から控除するというもの( 所法72 )。損失額が大きく,災害等発生年で控除しきれない場合には,翌年以後3年間を限度に繰り越して各年で控除できる。

生活に通常必要な車両に該当するものとして,具体的には,専ら通勤に使用している自動車などが挙げられる。これに対し,事業用として使用するトラックやワンボックスカー,専ら趣味娯楽のために所有するスポーツカーやキャンピングカーなどは該当しない。

この点,保有者の事情等により,保有目的,使用状況等が車両購入当初から変動することもあるだろう。例えば,事業用として保有・使用していたワンボックスカーを,新型コロナの影響等で事業廃止後,企業に就職したため通勤用として保有・使用していたところに災害等が発生した場合は,生活に通常必要な車両として雑損控除の適用を受けることができる。

なお,損失額は,損害を受けた時の直前の車両の時価で計算するが,被災資産ごとに損失額を計算することが困難など一定の場合には,取得価額から減価償却費を控除した額に,被害状況に応じて定められている被害割合を乗じて計算してもよいとされている。被害割合は,国税庁ホームページの被害割合表で確認できる。