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[全文公開] 中小M&A準備金制度と取崩し事由

( 46頁)

令和3年度改正で創設の「中小企業事業再編投資損失準備金制度」は,一定の計画に従って買収した株式等の取得価額70%までの金額を,準備金として積み立てることでM&A実施年度に損金算入できるもの( 措法55の2 ①, №3658 ・4頁等)。準備金は,据置期間中(準備金の積立事業年度終了日の翌日からの5年間)に“取崩し事由”が生じた場合には該当事業年度で一定額を取り崩して,生じなかった場合には据置期間経過後の5年間にわたって均等に益金算入することになる( 措法55の2 ②~⑤)。

ここでの取崩し事由とは,買収した株式等の売却や,帳簿価額の減額,経営力向上計画の認定取消しなどのこと。各事由に応じて計算した取崩し額を益金算入する。

例えば,株式の一部を売却した場合の取崩し額は,「準備金×売却した株式の数/売却直前に保有していた株式の数」で計算する(措令32の3①一)。X期にM&A実施で株式2,000株(取得価額1億円)を取得し,7,000万円(取得価額の70%)を準備金として積み立て,X+3期に500株を売却したケースを想定すると,X+3期の取崩し額は1,750万円(=7,000万円×500株/2,000株)となる。

また,据置期間中に取崩し事由が生じても,準備金が残る場合は,その残額に達するまでの金額を据置期間経過後の5年間で益金算入する。前述の例の場合,据置期間経過後5年間の均等益金算入額は1,400万円(=準備金7,000万円/5年)となるが,残額は5,250万円(=7,000万円-取崩し額1,750万円)なので,X+6期からX+8期はそれぞれ1,400万円,X+9期は残りの1,050万円(=5,250万円-1,400万円×3期分)を益金算入することになり,X+10期の益金算入額は0円になる。


【編注】

46頁右段上から9行目に誤りがありました。正しくは,以下のとおりとなります。お詫びして訂正いたします。

 また,据置期間中に取崩し事由が生じても,準備金が残る場合は, その残額に達するまでの金額を据置期間経過後の5年間で益金算入する。前述の例の場合,据置期間経過後5年間の均等益金算入額は1,400万円(=準備金7,000万円/5年)となるが,残額は5,250万円(=7,000万円-取崩し額1,750万円)なので,X+6期からX+8期はそれぞれ1,400万円,X+9期は残りの1,050万円(=5,250万円-1,400万円×3期分)を益金算入することになり,X+10期の益金算入額は0円になる。  また,据置期間中に取崩し事由が生じても,準備金が残る場合は, その残額を据置期間経過後の5年間で均等に益金算入する。前述の例の場合,残額は5,250万円(=7,000万円-取崩し額1,750万円)となるので,X+6期からX+10期でそれぞれ均等に益金算入する額は,1,050万円(=5,250万円/5年)となる。

本誌 №3672 にて訂正記事を掲載しています。データベースでは、該当箇所を直接修正しています(2021.9.24修正済み)。