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[全文公開] 差置送達の有効性

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調査で税務当局との間に見解の相違が生じ,更正処分等を受けるケースもあるだろう。納税者が税務職員から書類を直接受け取る交付送達については,その場所にいるにも関わらず,受領を拒んだときには,郵便受け等への投函をもって処分の効力が生じる。

税務署長等が発する国税関係書類は,送達を受けるべき者の住所や居所に送達することとされる( 通法12 ①)。送達の方法は,通常は普通郵便で行い,重要度が高い加算税の賦課決定通知書等には書留等を用いる。ただ,書留等の受取りを意図的に回避しようとする納税者に対しては,税務職員が書類を直接手渡す“交付送達”という手段を取る。その上,交付送達においても直接手渡しが難しい一定の場合には,送達すべき場所に書類を差し置くことで効力が生じる“差置送達”という方法が認められている( 通法12 ⑤二)。

一定の場合とは,送達を受けるべき者が送達場所にいない場合や正当な理由なく書類の受領を拒んだ場合を指す。ただ,どのようなケースで差置送達が有効となるか否かの基準がわかりにくかった。令和2年10~12月分の公表裁決事例では,簡易迅速に送達して処分の効力を生じさせる必要性などの制度趣旨等を鑑み,歯科医院を営む請求人が差置送達のために来訪した職員を認識しつつも,診療中を理由に受領を拒んだのは正当な理由に当たらないと判断された。差置送達の有効性が明確になった事例といえるだろう( №3670 )。

なお,送達の効力発生時期については,その書類が社会通念上,送達を受けるべき者の支配下に入ったと認められるときに生じる。いったん有効に書類が送達された場合には,たとえ,その書類が返戻されても送達の効力には影響がないとされる( 通基通12 -10)。