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[全文公開] 少額短期保険と生命保険料控除

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少額な保険料で,多様なニーズに対応する少額短期保険(いわゆる「ミニ保険」)。コロナ禍では,結婚式や旅行のキャンセル費用補償といった商品に注目が集まっているようだ。定番の死亡保障の生命保険も,手ごろな保険料が魅力だが,税務上の生命保険料控除の対象とはならないことに留意しておきたい。

ミニ保険は,一般の生命保険などよりも保険料が少額で,保険期間が1年以内(損害保険は2年以内)であることが特徴だ。全国の財務局に登録された少額短期保険業者が販売でき,スマホ保険やペット保険などのほか,感染症にり患した場合に,一時金が支払われる商品も登場している。

所得税法上,生命保険会社との生命保険契約に係る保険料は,生命保険料控除の対象となるが,ここでいう「生命保険会社」とは,保険業法2条3項に規定されるものをいう( 所法76 ⑤一)。一方で,ミニ保険を販売する「少額短期保険業者」とは,保険業法2条18項に規定されるものをいい,年間収受保険料が50億円以下であるなど小規模な事業者に限られる。両者の保険商品は区別されており,たとえ,死亡保障に係る生命保険契約であっても,ミニ保険に係る保険料は生命保険料控除の対象とならない。年末調整や確定申告の際に必要な生命保険料控除証明書も発行されない。

なお,ミニ保険により受け取った保険金は,一般の保険契約等による保険金の取扱いと同様に,心身に加えられた損害や突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するもの等は非課税となる( 所法9 ①十八)。例えば,結婚式等のキャンセル費用を補償する保険金は,資産の損害に基づくものとして,感染症保険による一時金等は,心身の損害に基づくものとして,非課税になるという( 所令30 )。