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[全文公開] 非居住者からの不動産購入と源泉徴収

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非居住者から日本国内の一定の不動産を購入した場合,その買主が非居住者(売主)に支払う譲渡対価は,国内源泉所得として10.21%での源泉徴収が必要となる( 所法161 ①五, 所令281の3 等)。源泉徴収漏れによる不納付加算税の賦課を避けるためにも,売主が非居住者であるか否かの確認・検討を行うことが肝要だ。

所得税法上の居住者・非居住者のいずれに該当するかは,その者の“生活の本拠”がポイントとなる( 所法2 ①三,五, 所基通2-1 等)。住民票の住所地が日本であることは,“生活の本拠”が日本であることを裏付ける要素の一つとなるものの,資産の所在などといった様々な要素を総合勘案して判断することが必要だ。

過去の裁判例では,不動産の売主の住所地が日本であり,口頭で居住者である旨の確認を行っていたにもかかわらず,非居住者と判断された事例がある(東京地裁:平成28年5月19日判決)。この事例では,①売主の日本での滞在期間が僅少であったこと,②譲渡対価の振込先がアメリカの銀行口座であったこと,③譲渡対価の送金依頼書にアメリカの住所地が記入されていたことなどの事実認定が行われた結果,買主側で,売主が非居住者であるか否かを確認すべき注意義務を尽くしていないと判断された。

買主側で売主が非居住者であるか否かの確認・検討を行うことにより,仮に,源泉徴収漏れが生じたとしても,不納付加算税が免除される「正当な理由があると認められる場合」に該当する余地がある( 通法67 ①等)。

なお,日本税理士会連合会の「令和4年度税制改正に関する建議書」では,税務調査で指摘される事例が多いことを踏まえ,売主が居住者である旨を告知したにもかかわらず,非居住者であった場合,買主に納税告知処分を行わない措置の創設を要望している。