[全文公開] 未払賃金立替払制度と退職所得
企業の経営破綻等に伴い,賃金が未払のまま退職した従業員に対し,その未払賃金の一部を国が肩代わりする未払賃金立替払制度がある。同制度に基づき支払われた未払給与等は,退職手当等とみなされ,退職所得とされる。
同制度は独立行政法人労働者健康安全機構(以下,機構)が実施するもので,1年以上労災保険適用事業を行っていた事業主(個人・法人)が,①破産手続開始の決定,②特別清算手続開始の命令,③再生手続開始の決定,④更生手続開始の決定のいずれかを受けて法律上の倒産をした場合,又は労働基準監督署長の認定を受け,事実上の倒産をした場合(中小企業事業主のみ)が対象となる(賃金支払確保法7)。
破産手続開始等の申立日等の6か月前の日から2年の間に退職した従業員が,破産手続開始の決定日等の翌日から2年以内に機構に未払賃金の立替払を請求することで,年齢に応じ一定の上限額はあるものの,原則,未払賃金総額の8割の立替払を受けられる(同令3等)。
立替払の対象となる未払賃金は,退職日の6か月前から請求日前日までに支払期日の到来している,総額2万円以上の未払の定期給与及び退職手当等に限られ,賞与は対象とならない(同令4②, 措通29の4-1 (注)2)。未払給与等に係るものとして立替払を受けた金額は,事業主から退職日に支払を受けるべき退職手当等とみなして取り扱われる( 措法29の4 )。
これら立替払の請求時に,請求書下欄にある「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」に記入して提出することで,未払給与等及び未払退職手当等に係る立替払金のいずれも,退職所得控除を受けることができる( 所法203 等)。
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