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[全文公開] 経営資源集約化税制とM&Aの範囲

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令和3年度改正で経営資源の集約化(事業承継等,以下,M&A)の実施による生産性向上等を目的に創設された「中小企業経営資源集約化税制」。1度の計画認定で3つの税制措置を同時に活用できるとあって,手続き面での負担軽減が期待されるが( №3636 ・22頁等),各措置を単体で活用する場合と比較して,対象となるM&Aの内容が異なることがある。

経営資源集約化税制の3つの措置とは,①中小企業経営強化税制( 措法42の12の4 ),②中小企業事業再編投資損失準備金制度( 措法55の2 ),③所得拡大促進税制の上乗せ措置( 措法42の12の5 ②)のこと。このうち,M&Aの範囲が異なるのは,①経営強化税制をD類型で活用する場合と,②準備金制度だ。

①のD類型は,M&A実施後に一定の要件を満たすことが見込まれる設備を取得等した場合に,即時償却又は税額控除の適用を受けることができるもの。ここでのM&Aの範囲は広く,例えば,株式取得,株式交換,吸収合併,新設合併などが該当する(中小企業等経営強化法2⑩)。

一方,②準備金制度は,M&A実施時に取得した株式等の取得価額の70%までを準備金として積立てることで積立額を損金算入できるものだが,ここでのM&Aの範囲は限定的で,株式又は出資の“取得”のみが該当することになっている( 措法55の2 ①,中小企業等経営強化法2⑩八)。このため,例えば,M&Aの内容が株式交換の場合,①のD類型を単体で適用を受けることはできるが,②準備金制度では対象外となるため,3つの措置を同時に適用することはできない。

なお,②準備金制度で対象となるM&Aの株式等の取得には,取得価額10億円以下と制限が設けられている。