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[全文公開] 精算課税・暦年課税の見直し議論

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「相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方の見直し」。令和3年度与党税制改正大綱で検討する方針が示されたことで,令和4年度の与党大綱にその具体的内容が盛り込まれるか注目されたが,昨年同様,同見直しの検討を進める旨が記されるのみとなった。

相続税と贈与税は別個の税体系とされており,贈与税は,相続税の累進回避を防止するため相続税より重い税率構造が設定されている。ただ,相当に高額な相続財産を保有する場合では,相続財産に適用される限界税率を下回る水準まで財産を分割贈与することで,相続税の累進負担を回避しながら,多額の財産の移転を図るケースがみられる。

政府税制調査会では,「諸外国の例を参考にしつつ,相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から,現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直し,格差の固定化を防止しつつ,資産移転の時期の選択に中立的な税制を構築する方向で,検討を進める必要がある」などとされていた( №3631 等)。一定期間又は一生涯の累積贈与額と相続財産額に対し一体的に課税され,資産移転の時期の選択に中立的であるものとして,アメリカ,ドイツ,フランスの制度が参考に挙げられた。贈与税と相続税が一体的に課税される「相続時精算課税制度」は,資産移転の時期の選択に中立的といえようが,現行では相続前3年間の贈与のみを相続財産に加算する「暦年課税制度」との選択制であり,その利用は暦年課税より少ない。同会では,“相続時精算課税制度の適用を原則化すべきでは”,という意見も出た。

また,経済対策として講じられている贈与税の非課税措置についても,令和4年度の与党大綱にそのあり方の見直しを行っていく方針が示されている。今後の政府税制調査会での議論を含め,相続税・贈与税の制度の見直しの行方が注目される。