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[全文公開] 見積法の国外中古建物と一定の書類

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令和2年度改正で創設された「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の特例」により損益通算の節税スキームが規制されて以降,初めての確定申告期を迎える。中古資産の耐用年数( 耐令3 )を適用した国外中古建物が規制の対象となるが,「見積法」であれば,一定の書類を確定申告書に添付することで規制対象から除外される。

本特例は,令和3年分以後の所得税から,国外中古建物に生じた不動産所得の損失額のうち,減価償却費に相当する額が消失し,給与所得など他の所得と損益通算ができなくなるというもの( 措法41の4の3措令26の6の3№3611 ・6頁)。例えば,損失額100で,減価償却相当額80(損失額≧償却費)の場合は80が消失するため損益通算対象額は20となる一方,減価償却費120(損失額<償却費)の場合は損失額全額が消失するため損益通算対象額は0となる。

規制対象から除外される「見積法」の一定の書類とは,以下の①から③のいずれかで使用可能期間を見積もったことが証明される書類を指す( 措規18の24の2 ①)。

  • ① 建物所在国の法令に基づく耐用年数に相当している旨を明らかにする書類

    ② 不動産鑑定士等が見積もったことを証明する書類

    ③ ①②が困難なとき,取得時の取引の相手方等が見積もったことを証明する書類

①に該当する書類とは,例えば,その耐用年数が示されている所在国の法令等の条文や耐用年数表のほか,所在国当局が公表する耐用年数に関する手引き・パンフレット等でもよいとのことだ。これらの書類は,外国語で作成されていることがほとんどであろう。この場合,日本語に翻訳された書類も併せて添付しなければならない( 措規18の24の2 ①一②)。

なお,建物の使用可能期間の見積もりが困難な場合に適用できる「簡便法」で耐用年数を算出した国外中古建物は,すべて規制対象となる。