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[全文公開] 雑損控除の合理的な計算と減価償却費

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日向灘を震源とする地震により被災された皆様に,心よりお見舞い申し上げます。

災害等により住宅や家財,自家用車等の生活に通常必要な資産(非事業用資産)に損害を受けた場合,雑損控除の適用で所得税額を軽減することができる( 所法72 )。控除額の算定の基になる損失額は,原則,災害等発生直前の資産の時価となるが,被害状況等により時価の算定が困難な場合は,“合理的な計算方法”によって求めることができる。

合理的な計算方法は,資産の種類や状況によって異なる計算式が定められており,ほとんどのケースで減価償却費相当額を用いることになる(国税庁HP「雑損控除の適用における『損失額の合理的な計算方法』」)。ここでの減価償却費相当額は,事業用の償却費とは異なる計算式で求めなければならない。

そもそも毎年の必要経費に算入する減価償却費の対象資産は,不動産所得,事業所得,雑所得等を生ずべき業務の用に供される資産等(事業用資産)に限られるため( 所法2 ①十九),通常であれば非事業用資産について償却費を求めることはない。雑損控除の適用に当たり合理的な計算方法を選択し,例外的に非事業用資産の減価償却費相当額を求める場合は,譲渡所得の計算における取得費の計算で用いる減価償却費相当額と同様に,「取得価額×0.9×償却率×経過年数」で計算することになる( 所法38 ②, 所令85206 ③一)。

ここでの償却率は,通常,非事業用資産は事業用資産に比べて消耗スピードが遅いことから,事業用資産の耐用年数の1.5倍に対応するものになっている。例えば,鉄筋コンクリート造の住宅の場合,その住宅が事業用資産であれば47年であるところ,非事業用資産の場合は1.5倍相当の70年として償却率が算定される。

なお,経過年数に1年未満の端数がある場合,6か月以上は1年,6か月未満は切り捨てて計算する。