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[全文公開] 免税事業者との取引条件の見直し

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令和5年10月1日からのインボイス制度の実施を契機とした免税事業者との取引条件の見直しを巡り,以前から実務家の間で「免税事業者に取引価格の交渉を依頼すること自体が独占禁止法上問題となるのか」などと疑問を抱く向きがあった。この点について,財務省や公正取引委員会等が考え方を示した( №3688 )。

先般公表された「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」によると,仕入先である免税事業者との取引について,インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことそれ自体が,直ちに問題となるものではないという(Q&A・Q7)。

また,免税事業者が,課税事業者となることができる(簡易課税制度も選択できる)ことを理解したうえで引き続き免税事業者でいることを選択し,再交渉において“双方納得の上で”取引価格を設定すれば,結果的に取引価格が引き下げられたとしても,独占禁止法上問題とはならないようだ。

他方で,再交渉が形式的なものにすぎず,仕入側の事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を設定し,免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合であって,免税事業者が今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には,優越的地位の濫用として独占禁止法上,問題になり得るとのこと。

例えば,仕入側が一方的に「今後は消費税相当額○○円を支払わない」「○○円でないと今後取引はできない」と減額を強要する行為は問題となり得るということだ。

なお,インボイス制度導入後3年間は仕入税額相当額の8割,その後の3年間は5割の仕入税額控除を認める経過措置がある。そのため,取引価格について,一度に消費税相当額を引き下げるのではなく,経過措置に沿って段階的に引下げを行うのが望ましいようだ。