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[全文公開] 免税事業者となる際の棚卸資産の調整

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免税事業者が課税事業者となるタイミングで棚卸資産を有している場合,その棚卸資産に係る消費税について仕入税額控除ができるが,課税事業者が免税事業者となる際には,その反対の調整が必要となる。

免税事業者が新たに課税事業者となる際には,棚卸資産に係る消費税額の調整を行うことが可能だ。すなわち,課税事業者となる日の前日において所有する棚卸資産のうちに,納税義務が免除されていた期間に仕入れた棚卸資産がある場合は,その棚卸資産に係る消費税額を,課税事業者になった課税期間の仕入れに係る消費税額とみなして仕入税額控除の対象とすることができる( 消法36 ①)。納税者に有利な規定となるため,課税転換する場合には,忘れずに同規定を適用したい。

一方,課税事業者が免税事業者となる際には,その逆の処理を行わなくてはならない。すなわち,免税事業者となる課税期間の直前の課税期間に仕入れた棚卸資産を,その直前の課税期間の末日において所有している場合,その所有する棚卸資産に係る課税仕入れ等の税額は,その直前の課税期間の仕入税額控除の対象とすることができないため,これを除く必要がある( 消法36 ⑤)。調整を失念した場合,税務調査等で指摘される可能性が高いため,こちらも忘れないようにしたい。

なお,令和4年度改正では,免税事業者から課税事業者に移行する場合の棚卸資産に係る消費税額の調整規定について,インボイス移行に係る免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の期間(令和5年10月1日~令和11年9月30日)の取扱いが緩和され,課税転換する免税事業者が,その免税事業者期間における免税事業者等からの仕入れに係る棚卸資産についても,その消費税額の全額(現行は8割又は5割)を仕入税額控除できるようになる( №3692 ・2頁)。