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[全文公開] 災害損失特別勘定の繰入額

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台風や豪雨等による被害が甚大で、早期に修繕等が行えなかったり、完了しなかったりする場合、損失が発生した事業年度(被災事業年度)と実際に修繕等を行った事業年度で期ズレが生じることがある。

被災により修繕等をする場合、原則、支出した事業年度で損金の額に算入される。ただ、被災した棚卸資産及び固定資産の修繕等のために要する費用で、災害発生日から1年以内に支出するものとして適正に見積もることができる額は、損金経理を要件に、災害損失特別勘定に繰り入れ、確定申告等で必要書類を添付することで、被災事業年度で損金算入できる( 法基通12-2-6 等)。

一方、会計上は「①将来の特定の費用又は損失で、②発生が当期以前の事象に起因し、③発生の可能性が高く、④その金額を合理的に見積ることができる」という計上要件(企業会計原則注解18)を満たす場合には、災害損失引当金を計上しなければならない。

会計上の災害損失引当金の処理が災害損失特別勘定の繰入れとして認められるところだが、対象費用等について、税務上は“1年以内の支出”という制限があるのに対し、会計上は具体的な定めがない。そのため、会計上の繰入額が税務上の繰入額を上回るケースが考えられる。ただ、「災害損失特別勘定の損金算入に関する明細書」( 法基通12-2-9 )において税務上の繰入額の範囲と明細があれば、被災事業年度への繰入額分については、損金算入が認められる。

なお、税務上の“災害発生日から1年以内”とは、法令の規定や自治体の定めた復興計画等により、一定期間修繕等の工事に着工できない場合、“修繕等の工事に着工できる日から1年以内”と読み替えることができる( 法基通12-2-7 (注))。