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[全文公開] NFTを交換した場合の課税関係

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先般、非代替性トークン(NFT)を用いた取引について、所得税法上の課税関係が国税庁のタックスアンサーで公表された( №3698 )。NFTとは、ブロックチェーン技術でコピーや改ざんを防止し、デジタルデータに唯一無二の資産価値を付与したデジタル資産のこと。その所得が譲渡したNFTの値上がり益と認められる場合に譲渡所得となる。仮に、NFTを交換した場合には、対価を金銭で受け取っていなかったとしても課税関係が生じるという。

資産の譲渡については、有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為をいい、通常の売買のほか、交換、競売、公売、代物弁済、財産分与なども含まれると解されている( 所法33 )。NFTは、デジタル上のアート作品、楽曲、ゲーム内で使用できるアイテムなどと多種多様で、NFTそのものの交換であっても、その実態は資産の譲渡に相当することから、現実の物々交換と同様に、相手方に譲渡した時点で課税所得が生じる。

例えば、活発な市場が存在する一定のNFTを前提に、金銭での売買を行わず、個人間で交換したケースを想定する。個人が市場での取引価額100万円の“デジタル絵画(取得価額10万円)”を、市場での取引価額100万円の別の“デジタル絵画”と等価交換した場合には、資産の引渡しが行われた年において、90万円(=100万円-10万円)の譲渡所得が発生することになる。この場合、交換により取得した“デジタル絵画”の取引価額については、金額を証明できる書類等を保存しておくことが望ましい。

なお、交換したNFTの価値が等価ではなく、市場での取引価額に差がある場合は、その差額分に一定の課税関係が生じる。個々の事情を踏まえ、交換に応じた相手方との関係性、取引の動機、金額の妥当性などを総合的に勘案する必要があるという。