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[全文公開] 遺産未分割と更正の請求

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相続開始後、遺産分割協議が調わないままに申告期限を迎えることがあろう。こうした場合、一旦は法定相続分で申告した後、分割確定時に相続税法の特則により更正の請求をすることができる( 相法32 ①一)。ただし、その分割確定に伴い、二次相続の申告税額が変動するような場合には、同特則を適用することができない点に留意されたい。

相続財産の全部又は一部が未分割のまま相続税の申告期限を迎える場合、未分割財産は法定相続分等に従って遺産を取得したものとして課税価格を計算し、申告する( 相法55 )。例えば、被相続人である父に係る未分割財産が2億円で、相続人が母・子2人の場合、法定相続分に従い、母が1億円、子2人がそれぞれ5,000万円ずつ取得したとして課税価格を計算して申告する。その後、遺産分割が確定し、実際の取得額は母が8,000万円、子2人がそれぞれ6,000万円となり、母の税額が減少した場合、母は更正の請求の特則を適用できる( 相法32 ①一)。この場合、税額が増加する子2人は修正申告を行うか、更正を受けることになる( 相法31 ①、35)。

このとき、父に係る相続(一次相続)の後、遺産分割の確定前に母が亡くなり(二次相続)、二次相続についても申告期限を迎え、母の一次相続に係る取得財産を法定相続分で申告していた場合、一次相続の遺産分割確定に伴い、二次相続の税額が減少する可能性がある。しかし、相続税法の更正の請求の特則は、あくまで未分割の遺産が生じた相続にのみ適用できるもの。一次相続の分割確定に伴い二次相続の税額に変動があったからといって、二次相続について特則による更正の請求は適用できない(静岡地判平26.3.14)。

ただ、二次相続の申告期限から5年以内であれば、個別の判断にはなるが、税額等の計算が法律に従っていなかったこと等の事実が具体的に認められれば、国税通則法に基づく更正の請求は可能だという( 通法23 ①一)。