※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

[全文公開] 消費税の不正受還付と国の対応

( 45頁)

近年、消費税の仕組みを悪用した不正受還付事案が相次いでいる。国税庁によると、平成29年度から令和3年度まで5年間の消費税不正受還付事案の告発件数は計57件で、不正受還付額は計35億9,000万円にのぼる。

消費税は取引の各段階で課税され、商品やサービスなどの最終消費者が実質的に負担する仕組み。課税売上げに係る消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除する「前段階税額控除方式」が採用されており、課税仕入れに係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回る場合は、還付を受けることができる( 消法52 ①)。

消費税不正受還付はこの仕組みを悪用したもの。例えば、消費税の課税仕入れの対象とならない従業員給与の一部を、消費税の課税仕入れの対象となる外注費に仮装し、架空の請求書を作成する。このような方法等によって課税仕入れに係る消費税額を過大に計上し、不正に還付を受けるなどの事案がみられる。

国税庁は不正受還付事案への対応を重点課題と位置付け、これまでの申告状況等から消費税の不正還付が想定される法人をリスト化し管理するなど、消費税の不正受還付者への対応を強化している( №3708 )。また、国税庁ホームページの「ご意見・ご要望」に情報提供フォームを設け、課税及び徴収漏れに関する情報提供を受け付けている。これまで、虚偽の国内仕入れ(課税取引)や虚偽の輸出売上げ(免税取引)を計上する方法等により消費税の不正還付を受けていた者の情報等を得ているという。