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[全文公開] 文書の写しと印紙税の課否判定

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IT化に伴う事務処理方式の変更等から、印紙税の課否判定の場面で苦慮するものに文書の正本と写しの扱いがある。写しや控えはすべて課税対象外と誤解する向きが一部であるようだが、文書作成の目的や書面交付の有無などにより、総合的に判定する必要がある。

印紙税では、契約書や注文請書など、経済取引に際して作成される各種文書のうち、同法に規定する課税文書の作成者に納付義務がある( 印法3 ①)。課税文書に該当するか否かは、文書に記載された個々の内容を検討し、記載文言の実質的な意義に基づいて判断する( 印基通3 ①)。ここでいう文書とは、“紙”に文字が記載されたものを指すことから、スキャナによる画像データ等を除けば、交付した正本だけではなく、写しや控えも課税対象となることがある。

国税庁のタックスアンサーによると、FAXやメール等で送付した契約書の正本等が送付元に保存され、送付先に文書が交付されていない場合、送付先で出力された文書は、単なる写しとして課税対象外とされる(№7120. 契約書の写し、副本、謄本等)。ただ、同取扱いは限定的な場面を想定していることから、基本的に写しの課否判定をする場合には、作成・交付の実態に即して判断する必要があるという。

例えば、注文請書の正本をデータで作成・送付した後、取引相手の求めに応じ、改めて出力紙を交付したケースを考える。発行者側が“単なる写し=課税対象外”と認識していたものであっても、わざわざ出力し直して取引相手に再交付していた場合には、署名の有無に関わらず、国税当局側がその記載文言の実質的な意義を“契約成立を証明する目的で作成したもの=課税対象”とすることがあり得るようだ。