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[全文公開] インド法人と技術上の役務に対する料金

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日本法人が外国法人に支払う人的役務提供事業に係る対価は、租税条約等の規定により、源泉徴収が不要となることが一般的だ。しかし、インド法人に支払う一定の人的役務提供事業に係る対価は、役務提供地等にかかわらず、国内源泉所得として源泉徴収が必要となる。

国内法上、外国法人が日本国内で行う人的役務提供事業に係る対価は、国内源泉所得に該当する( 所法161 ①六等)。ただし、いわゆる“PEなければ課税なし”の原則により、日本が締結する多くの租税条約等では、相手国内の恒久的施設(PE)を通じて事業活動を行わない限り相手国で課税しないものとされている。

この点、日印租税条約では、他の国・地域との租税条約等とは異なり、「技術上の役務に対する料金(技術者その他の人員によって提供される役務を含む経営的若しくは技術的性質の役務又はコンサルタントの役務の対価としてのすべての支払金)」等については、“支払者側の居住地国内で生じたもの”とされることになっている(日印租税条約12⑥)。

例えば、①日本にPEを有していないインド法人の技術者が来日し、日本法人にソフトウエア開発のコンサルティングを行った場合、PEを通じて行われた役務提供ではないものの、日本法人がインド法人に支払うコンサル料は「技術上の役務に対する料金」として国内源泉所得に該当することになる。また、②日本法人の技術者がインドで同コンサルティングを受けた場合、役務提供地は国外(インド)であるものの、日本法人が支払うコンサル料は、国内源泉所得に該当する。

人的役務提供事業に係る対価の税率は20.42%が基本だが、インド法人が日本法人を経由して所轄税務署長に租税条約に関する届出書を提出すれば限度税率10%となる。