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[全文公開] 配偶者居住権の賃料収入と所得区分

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民法改正により令和2年4月から配偶者居住権が創設された。借地権等と同様に相続税の課税対象となる新たな権利で、これまで配偶者居住権に係る相続税の評価方法といった税法上の取扱いが示されてきた( №3616 等)。

しかし、配偶者居住権に基づき配偶者が自宅の一部等を第三者に賃貸した際の賃料の課税関係は明らかにされていない。本誌取材によれば、配偶者居住権に基づく自宅の賃貸に係る賃料は、配偶者の不動産所得( 所法26 )として課税対象になるという。

配偶者居住権は、夫婦の一方が亡くなった場合に、被相続人が所有していた自宅に残された配偶者が住み続けることができる権利(民法1028)。遺産分割や遺贈等で配偶者居住権を設定することにより、自宅の所有権を子に相続させても配偶者は自宅に居住し続けることが権利上可能なうえ、自宅の所有権を取得しない代わりに配偶者は自宅以外の財産をより多く相続できることになり、今後の生活費を確保しやすくなる等のメリットがある( №3638 等)。

相続により自宅の所有者となる子に承諾を得れば、配偶者は設定した配偶者居住権に基づき、自宅を第三者に賃貸するといった使用収益が可能だ(民法1032③)。配偶者居住権に基づき配偶者が自宅を賃貸した場合、あくまで賃貸人は自宅の所有者である子ではなく配偶者であるため、その自宅に係る賃料収入は配偶者に帰属する。

そして、その賃料収入は、不動産(自宅)の貸付けに係る所得に当たり、配偶者は不動産所得として確定申告をすることになる。