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[全文公開] 配偶者居住権の賃料収入と必要経費

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配偶者居住権に基づき配偶者が自宅の一部を第三者に賃貸した場合の賃料は、配偶者の不動産所得に該当する( №3729 )。その不動産所得の金額の計算上、配偶者が負担すべき自宅に係る固定資産税等は必要経費に算入できる。

配偶者居住権は、夫婦の一方が亡くなった場合に、亡くなった者が所有していた自宅に残された配偶者が住み続けることができる権利(民法1028)。遺産分割等で配偶者居住権を設定することで、自宅の所有権を子に相続させても配偶者は自宅に居住し続けることが権利上可能なうえ、配偶者は自宅の所有権の代わりに自宅以外の財産をより多く相続できる( №3638 等)。

相続により自宅の所有者となる子に承諾を得れば、配偶者は配偶者居住権に基づき、自宅を第三者に賃貸するなどの使用収益も可能だ(民法1032③)。その賃料収入は賃貸人である配偶者の不動産所得として所得税の課税対象となる。

配偶者居住権を設定している場合、配偶者はその建物の通常の必要費を負担するものとされており(民法1034①)、自宅の固定資産税は配偶者が負担すべき費用に当たるようだ。そのため、配偶者居住権に基づき配偶者が自宅を賃貸する場合、配偶者が負担すべき固定資産税は自宅の賃貸に係る必要経費として、配偶者の賃料収入から差し引くことができる。

また、配偶者と自宅の所有者である子が生計一の場合、本来は子の必要経費に算入されるべき自宅の減価償却費を配偶者の必要経費に算入できるという( 所基通56-1 )。貸付けの面積部分に係る減価償却費相当額を必要経費に算入する。例えば、配偶者と子が同居している場合、明らかに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、生計一に当たる( 所基通2-47 )。