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[全文公開] インフレ手当と社会保険料

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昨年からの物価高騰を受け、従業員等に“インフレ手当”を支給する企業が増えている。月額給与への上乗せ又は賞与など臨時に支給するものは給与課税の対象で、社会保険料については算定対象外としているケースがあるようだ。だが、個々の状況によっては、社会保険料の“報酬等”に該当し、社会保険料の算定対象と考えた方がよい場合もある。

社会保険料は、1か月に支給される報酬や賞与(以下、「報酬等」)を一定の等級に区分した“標準報酬月額”で確定する。ここでいう報酬等とは、名称を問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのもので、臨時に受けるもの等が除かれる(厚生年金保険法3①三等)。

日本年金機構によると、被保険者が受けた支給については、①労働の対償に当たるか否か、②通常の生計に充てられるか否か、いずれの要件も満たす場合に“報酬等”とした上で、“報酬”又は“賞与”への該当性を2段階で判断する必要があるという。

インフレ手当の支給は、一般的に、急激な物価上昇を背景とした従業員等への生活費の補填というケースが少なくない。個々の事情を勘案したとき、“報酬等”に当たらないケースもあるかもしれないが、本来、従業員等が支出すべきものを会社が補填し、被保険者が生計に充てている等の見方ができることも踏まえると、実態によっては、社会保険料の算定対象とみなされる可能性もあるようだ。一義的な判断が難しいため、インフレ手当を支給する場合、各年金事務所へ照会することが望ましいという。

なお、社会保険料の算定対象外とされる“臨時に受けるもの”については、被保険者が常態として受ける報酬以外のもので極めて狭義に解するものとされる。標準報酬月額に関する事例集では、支給事由の発生、支給条件、支給額等が不確定で、経常的に受けるものではないものとして“大入袋”が例示されている(日本年金機構「疑義照会回答(厚生年金保険 適用)」被保険者資格取得届・整理番号8等)。