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[全文公開] 利子の支払と源泉徴収

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所得税等の源泉徴収をする時期は、原則、現実に源泉徴収の対象となる所得を支払う時とされる。実務では源泉徴収を行うべき“支払”が生じたか否かを気に掛ける必要があり、特に外国法人からの借入金がある場合の利子について源泉徴収漏れが散見されるという。

内国法人が、外国法人等から受け取った国内業務に係る貸付金の利子は、国内源泉所得として源泉徴収の対象とされる( 所法161 ①十、 212 ①)。また、源泉徴収を行う際の“支払”には、現実に金銭を交付する行為のほか、支払の債務が消滅する一切の行為も含まれるとされている( 所基通181~223共-1 )。

ここでいう支払債務の消滅とは、金銭の動きがない、利子の元本への繰入れや預金口座への振替え等の行為が当たり、実務上は“支払”に該当することから、源泉徴収をする必要がある。だが、実務担当者によっては、こうした事実を知らず、結果的に源泉徴収漏れとなっているケースが少なくないという。

具体的なケースとして、内国法人が外国親会社から借入れを行い、その利子を元本に繰り入れている場合等が挙げられる。現実に金銭での支払が生じないため源泉徴収は不要と誤解されやすいが、利子の元本繰入れは支払債務の消滅として“支払”に該当することに留意したい。

なお、外国法人との取引に係る源泉徴収では、租税条約の有無を確認する必要がある( 所法162 ①)。例えば、源泉地については、その使用地を所得源泉地とする、いわゆる“使用地主義”と、使用地に関わらずその支払をする者の居住地が所得源泉地となる“債務者主義”がある。租税条約の規定により課税関係等が異なるケースがあるので確認が必要だ。