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[全文公開] 生前贈与と相続時の特例

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令和6年以降、相続時精算課税で基礎控除が導入されるなど、今後、生前贈与の活用が見込まれる。生前贈与をするに当たっては、贈与税額に係る有利・不利等だけでなく、その後の相続まで見据えた検討が必要だろう。

生前贈与によって財産を取得して精算課税を適用した場合は、相続時の相続財産に贈与時の贈与財産の価額を加算する必要がある( 相法21の15 等)。暦年課税であれば、現行、相続開始前3年以内(令和9年以降順次延長され、令和13年以降は7年以内)の間に贈与を受けた財産の贈与時の価額を相続財産に加算する( 相法19 )。このとき、相続税の計算上、小規模宅地等の特例を適用できないことに留意したい。

同特例は、相続又は遺贈により被相続人等の居住用又は事業用の宅地等を取得した場合に、一定の限度面積まで、相続税の課税価格を最大80%減額できる制度だ( 措法69の4 )。ただし、同特例の適用対象となる特例対象宅地等には、被相続人から贈与により取得した土地等を含まない( 措通69の4-1 等)。つまり、土地等の贈与を受け、精算課税を適用した場合や、暦年課税の相続開始前贈与の加算措置の対象となる場合には、相続税の計算上、贈与財産の価額を相続財産に加算するが、小規模宅地等の特例を適用することはできない。

また、空き家に係る譲渡特例についても、生前贈与を行った家屋等は適用対象外となる。同特例は、相続又は遺贈により被相続人の居住用家屋及びその敷地等を取得した相続人が、一定の譲渡を行った場合に、譲渡所得の金額から最大3,000万円の特別控除ができるものだ( 措法35 ③)。たとえ、家屋等の贈与後に被相続人が住み続け、相続が起こったとしても、すでにその所有者は受贈者となっており、相続又は遺贈により取得したものとはいえないため、同特例の対象外となるという。