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[全文公開] 社内副業と源泉徴収

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副業解禁が進む中、本業とは別の社内部署のみで副業を認める“社内副業”を導入する企業がある。企業が本業の給与等とは別に社内副業の報酬を支払う場合、この報酬が「給与所得( 所法28 ①)」として源泉徴収が必要か否かは、実態に基づき判断することになる。

社内副業の報酬を別途支払う場合、本業(雇用契約)の所定労働時間とは別で他部署の業務を行えるよう、従業員と企業側で、社内副業についての業務委託契約を締結することがある。ただ、契約の名称から、社内副業の報酬は「事業所得( 所法27 ①)」などとして源泉徴収が不要と直ちに判断することはできない。

このうち、事業所得については、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得であるのに対し、給与所得は、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付とされる(最高裁昭和56年4月24日判決)。社内副業の報酬については、実態をこの基準に照らして総合的に判断するという。

例えば、Y社が、A部署で働く従業員Xと、B部署での社内副業について業務委託契約を締結し報酬を支払うケースを想定する。B部署での業務について、Y社からXに対して指揮命令や用具供与等をしているなど、B部署の従業員らと変化なく業務をしている場合は、社内副業の報酬は給与所得として源泉徴収が必要になるという。

一方、Y社から指揮命令や用具供与等はなく、Xが成果物をY社に引き渡しているなどの場合は、事業所得等となり源泉徴収が原則不要になるとのことだ。

なお、Xが給与等をA部署のみから受給しており、社内副業の報酬が事業所得等でその所得金額が20万円超の場合、確定申告が必要となる( 所法121 ①一)。