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[全文公開] 国外転出時課税の担保と納税猶予

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スタートアップ企業が海外進出のために役員等を海外に赴任させるケースがある。国外転出時課税制度の対象に該当し、納税猶予の特例を受ける場合は担保提供が必要だが、令和5年度改正で非上場株式等を担保とする場合の手続が簡素化。令和5年4月1日以後は一定の書類を提出することで、株券不発行の非上場株式や持分会社の社員の持分を担保として提供できる。

国外転出時課税は、国外転出等をする一定の居住者が1億円以上の対象資産を所有等する場合、国外転出等時に対象資産の譲渡等があったものとみなして、対象資産の含み益に所得税を課す制度。担保提供など所定の手続を行えば、国外転出日から5年4か月を超過する日まで納税が猶予される( 所法137の2 )。

改正前における担保の範囲は、国債・地方債、不動産、税務署長等が確実と認める有価証券や保証人の保証等とされていた( 通法50 )。非上場株式等を担保とすることも可能だったが、株券が不発行の場合は発券する必要があり、株券不発行会社から株券発行会社へ移行する定款変更等や発行された株券の管理等が必要になるなど、実務上の負担が大きかった。

改正後は質権の設定がされていないなど一定の要件を満たす場合に、株券不発行のままで非上場株式や持分会社の社員の持分を担保に納税猶予の特例を適用することができる( 所法137の2 ⑪二等)。

適用時の必要書類では、株券不発行会社に係る非上場株式を担保とする場合には、申告書に加え、株式に質権を設定することについての承諾書とその押印に係る印鑑証明書等、株主名簿記載事項証明書とその押印に係る印鑑証明書等を所轄税務署長に提出することとなる。