※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

[全文公開] 相続登記申請義務違反と過料通知

( 69頁)

所有者不明土地の発生予防のため、令和6年4月1日から、相続等により不動産を取得した相続人に対し、3年以内の相続登記の申請が義務付けられる( №36723722 等)。申請義務化は施行日前に開始した相続も対象となり、相続人への影響が大きいと想定されるため、税理士も留意されたい。

正当な理由なく申請を怠った場合は、10万円以下の過料の対象となる(新不登法164)。ここでいう「正当な理由」が認められる類型としては、①数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合、②遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合、また、申請義務者が③重病等である、④DV被害者で避難を余儀なくされている、⑤経済的困窮のため登記費用の負担能力がないといった事情がある場合が例示されている(法務省「相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン」)。

登記官が登記申請の審査過程等において申請義務違反の事実を把握した場合、まずは申請義務者に対して相当の期間を定めて申請義務の履行の催告を行う。催告に応じて登記申請があれば裁判所への過料通知は行わない。催告に応じず、正当な理由なく申請がされない場合に限り過料通知を行うこととされている(新不登規187一)。

なお、登記漏れの防止策として、令和8年2月2日から所有不動産記録証明制度が新設される予定だ(新不登法119の2)。被相続人等が所有権の登記名義人として記録されている不動産について、証明書の交付を受けることが可能となるため、相続人等において被相続人名義の不動産を一覧的に把握しやすくなるという。