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[全文公開] 大阪・関西万博の入場券の購入費用に係る税務上の取扱いQ&A①

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2025年日本国際博覧会(通称「大阪・関西万博」)が、2025年(令和7年)4月13日から10月13日までの184日間、大阪市の夢洲で開催される。SDGs達成への貢献などをテーマに掲げる大阪・関西万博の入場券を、取引先など広く交付することで、企業がSDGsへの貢献や社会貢献をアピールし、自社のイメージアップを図る動きがある。一方で、入場券を購入した企業では税務上の取扱いを巡る疑義が生じているという。

本誌では、大阪・関西万博の入場券の購入費用に係る税務上の取扱いについてQ&A形式で整理した(消費税の取扱いは後日掲載予定)。

<大阪・関西万博の入場券の概要>

1. 大阪・関西万博の入場券について教えてください。

大阪・関西万博の入場券(以下「入場券」)は、2023年11月30日から発売が開始されています。従来の紙のチケットに代えて、電子チケットが基本となります。

企業が購入した場合は、10桁の英数字をランダムに組み合わせたチケットIDの一覧がCSVデータで送付される仕組みです。

チケットの利用者は、スマホやPCで万博IDを登録してチケットIDと紐づけて、来場日時の予約、パビリオン・催事の抽選申込みや予約を行います。入場や入館時には、QRコードを表示したスマートフォンの画面(又は紙に印刷したQRコード)を端末にかざします。

入場券(1日券)の価格は、購入時期により異なります。

購入時期 大人
(18歳以上)
中人(12歳以
上17歳以下)
小人(4歳以
上11歳以下)
~2024/10/6 6,000円 3,500円 1,500円
2024/10/7~
2025/4/12
6,700円 3,700円 1,700円
2025/4/13~
10/13
7,500円 4,200円 1,800円
2025年4月1日時点の満年齢で、3歳以下は無料。価格は税込。

<税務上の取扱い>

2. 大阪・関西万博の入場券の購入費用に係る税務上の取扱いについて教えてください。

大阪・関西万博の入場券の購入費用に係る税務上の取扱いは、国税庁の文書照会事例「「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」に係る費用の税務上の取扱いについて(令和5年3月28日回答)」で、2005年日本国際博覧会(愛・地球博)と同様の取扱いになることが示されています。

2005年日本国際博覧会(愛・地球博)に係る文書回答で示された内容は次のとおりです(平成15年7月7日回答)。

8 入場券の購入費用については、次による。

(1) 法人が販売促進等の目的で当該入場券のみを取引先等に交付する場合の当該入場券の購入費用は、交際費等に該当せず、販売促進費等として処理する。

(2) 企業等が従業員の慰安会、レクリェーション等として博覧会を見学させる場合の当該入場券の購入費用及びその見学のために通常要する交通費、宿泊費等については、福利厚生費に該当する。なお、従業員の家族を含めて実施した場合も同様とする。

3. 大阪・関西万博の入場券について、2005年日本国際博覧会(愛・地球博)と同様に「販売促進等の目的で当該入場券等のみを取引先等に交付する場合の当該入場券の購入費用は、交際費等に該当せず、販売促進費等として処理する」とした理由を教えてください。

国際博覧会は、国際的な文化交流、日本の最先端技術の発信などを目的とした国家的なプロジェクトとして開催するものであり、企業がその入場券を購入し、取引先等に交付することは、このような国際博覧会の性格からすると観劇等に招待する費用とは性質が異なります。企業が入場券の購入という形で大阪・関西万博に参加・貢献しているとの企業イメージを与えることを意図しているものであって、企業イメージの向上という販売促進や広告宣伝等の一環と考えられます。

4. 当社が購入した入場券を下請先若しくは孫請先又は当社のグループ会社の取引先などに交付した場合でも、販売促進費や広告宣伝費等として処理できますか。

Q3のとおり、国際博覧会の性格等を踏まえますと、大阪・関西万博に参加・貢献しているという企業グループのイメージ向上による販売促進や広告宣伝のために、下請先若しくは孫請先又はグループ会社の取引先などに広く入場券を交付するのであれば、その購入費用は販売促進費や広告宣伝費等に該当するものと考えられます。

5. 当社は、従業員等の慰安のために入場券を購入し、全従業員に交付する予定です。この場合における入場券の購入費用は、全額「福利厚生費」として処理することができますか。

福利厚生費として処理することができます。Q2のとおり、国税庁は文書回答で「企業等が従業員の慰安会、レクリエーション等として博覧会を見学させる場合の当該入場券の購入費用及びその見学のために通常要する交通費、宿泊費等については、福利厚生費に該当する」としています。

なお、Q2のとおり、企業等が従業員のレクリエーション等として大阪・関西万博を見学させる場合の入場券の購入費用を福利厚生費として処理できるのは、当然に以下のような場合を前提としているものと考えます。

・入場券を希望する全従業員を対象に(希望により家族分も含め)交付する。

・入場券は、購入企業において従業員又はその家族が使用することを条件に交付するものとし(転売や他人への譲渡は禁止)、従業員が実際に使用したことについては事後的に報告をさせる。

・購入企業は、交付を希望しない従業員に対し、入場券の代わりに金銭を給付する等の対応は行わない。

6. 当社(親会社)は、関係会社の従業員等に対しても入場券を交付する予定です。Q4と同様に交付時の「販売促進費等」として処理することはできますか。

関係会社の従業員等に対する入場券の交付は、一般的に、本来関係会社が負担するべき自社の従業員に対する福利厚生のための費用を親会社が関係会社に代わって負担しているものと考えられ、販売促進等の目的で入場券を交付するものとは認められませんので、関係会社への寄附金に該当するものと考えられます。


※この記事についての補足を №3805 に掲載しています。

<損金算入時期>

7. 「販売促進目的」で購入した入場券の購入費用は、いつの事業年度の損金に算入できますか。

販売促進費として処理する入場券の購入費用は、企業イメージの向上を目的としたものであるといえます。取引先に入場券を交付した時点で損金算入することになります。

大阪・関西万博の開幕前に入場券を交付した場合でも損金算入することが可能です。

8. 「福利厚生費」として処理する入場券の購入費用は、いつの事業年度の損金に算入できますか。

原則として、入場券を使用した時点で損金算入することになります。

また、入場券を従業員に交付した時点で損金算入することとしても差し支えありません。

<入場券をもらった者の取扱い>

9. 取引先から入場券の交付を受けた場合、資産計上をする必要はありますか。

資産計上をする必要があります。入場券の交付を受けた側は、「雑益」として資産計上し、用途に応じて処理することになります。

なお、交付を受けた入場券が使用されなかった場合は、大阪・関西万博閉幕時点において「雑損失」として処理することになります。