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[全文公開] 大阪・関西万博の入場券の購入費用に係る税務上の取扱いQ&A②

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2025年4月13日に開幕する2025年日本国際博覧会(通称「大阪・関西万博」)の入場券の購入費用に係る税務上の取扱いについて、法人税の取扱い( №3803 )に続き、今回は消費税の取扱いをお届けする。入場券に係る消費税の課税関係、従業員等や取引先へ交付した場合の取扱い、仕入税額控除の適用を受けるために必要なインボイス等をQ&A形式で整理した。

<入場券の購入費用に係る消費税の課税関係>

10. 大阪・関西万博の入場券を購入した場合の消費税の課税関係について教えてください。

大阪・関西万博の入場券(以下「入場券」)は、消費税法における「物品切手等」に該当します。物品切手等の発行は不課税とされているため、その段階で課税仕入れとすることはできません。実際に物品又は役務の提供と引き換えた(引換給付を行った)時に資産の譲渡等として課税の対象になりますので、引き換えられた(引換給付を受けた)時においてその引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなります( 消法6 ①、消法別表2四ハ、 消基通6-4-511-3-7 )。

<入場券の購入者の取扱い>

11. 当社は、販売促進目的で万博協会から入場券を100枚購入しました。購入した入場券の全てを取引先A社及びB社に無償で交付した場合、消費税はどのように取り扱われますか。

万博協会からの入場券100枚の購入は「不課税」となりますので、購入時点で貴社の課税仕入れにはなりません。また、貴社が取引先A社及びB社に無償で交付した場合は、消費税の課税要件を満たしませんので「不課税」となります。

なお、入場券を取引先に販売した場合は、その取引先への販売額が貴社の「非課税売上げ」となります。

12. Q11について、入場券100枚を購入したのは当社ですが、当社では仕入税額控除を適用できないということですか。

消費税では、物品切手等により実際に物品又は役務の提供と引き換えられた(引換給付を受けた)時に、その引き換えた(引換給付を受けた)事業者の課税仕入れとなります。

そのため、入場券を取引先へ交付し、取引先によって使用されたのであれば、貴社では入場券の購入費用について仕入税額控除の適用を受けることはできません(入場券を使用した取引先が課税仕入れとして仕入税額控除の適用を受けることができます)。

13. 当社は、従業員等への福利厚生目的で入場券を100枚購入しました。購入した入場券を全て従業員等へ交付した場合、消費税はどのように取り扱われますか。

入場券100枚を購入した時点及び従業員等へ交付した時点では貴社の課税仕入れにはならず、従業員等が実際に使用した段階で貴社の課税仕入れとして仕入税額控除の適用を受けることができます。

なお、従業員等へ交付した入場券に係る購入費用について仕入税額控除の適用を受けるためには、当該入場券に係るインボイスの保存と従業員等が実際に使用したことについて事後的に報告を受けるなどの対応が必要です。

14. 入場券代金の一部を従業員等に負担させる場合の消費税の取扱いはどうなりますか。

従業員等に入場券代金の一部を負担させる場合、協会が交付するインボイスに記載された金額について、従業員等の負担額を減額することなく使用時の課税仕入れとすることができます。

なお、従業員等の負担額を減額した金額を課税仕入れとすることもできます。

<入場券の交付を受けた者の取扱い>

15. 取引先から入場券50枚について無償で交付を受け、その入場券を従業員等へ配付した場合、消費税はどのように取り扱われますか。

取引先から入場券について無償で交付を受けた時点では、消費税の課税要件を満たしませんので「不課税」となります。

交付を受けた入場券50枚を従業員等へ配付し、実際に使用された場合、貴社が“役務提供を受けた者”となるため貴社の課税仕入れとして仕入税額控除の適用を受けることができます。

16. 仕入税額控除の適用を受けるためにはインボイスの保存が必要になりますが、取引先から入場券を無償で交付された場合は、何をインボイスとして保存する必要がありますか。

万博協会では、入場券を購入した企業が取引先に交付する場合(購入者と使用者が異なる場合)を想定し、購入した企業に対し「入場チケットのインボイスに関する資料」を交付しています(【参考】)。

同資料には、適格請求書発行事業者の名称「公益社団法人2025年日本国際博覧会協会」及び登録番号「T9120005020700」、課税資産の譲渡等を行った年月日「博覧会開催期間2025年4月13日~10月13日」、取引内容「2025年日本国際博覧会(への)入場」、適用税率「10%」が記載されています。

また、同資料とチケットIDのリストを合わせることにより「課税資産の譲渡等の対価の額」が明らかとなりますので、これらを併せて簡易インボイスの記載事項を満たすこととなります。したがって、これらの資料を保存することで仕入税額控除の適用要件であるインボイスの保存要件を満たすことになります(同資料は、入場券を購入した企業から取引先に直接交付していただいて問題ありません)。

【補足】№3803「大阪・関西万博 入場券購入費用の取扱い①」Q6について

№3803 で掲載した内容について、多くの反響をいただきました。特にお問合せの多かった点について若干補足させていただきます。

Q6では、関係会社の従業員等の慰安等(福利厚生)のために親会社(貴社)が入場券を購入し、これを当該従業員等に貴社が交付する場合には、貴社の販売促進等の目的で入場券を交付するものとは認められない(親会社が関係会社に代わって負担しているものに該当する)ため、関係会社への寄附金に該当するとの回答をしたところです。

一方、販売促進や広告宣伝のために、下請先若しくは孫請先又はグループ会社の取引先などに広く入場券を交付する中で、貴社の関係会社に対しても入場券のみを交付する場合には、文書回答( №3803 の記事Q2)にもあるとおり、「法人が販売促進等の目的で当該入場券のみを交付する場合」に該当し、当該購入費用を販売促進費等として処理することとなるものと考えられます。