概要

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<通達本文>

法人が,分割,合併,現物出資,現物分配又は株式分配(以下「組織再編成」という。)によりその有する資産等を他に移転した場合には,原則として,移転資産等の譲渡損益を計上する(62の5①)。

ただし,当該組織再編成が下記(1)の適格組織再編成(適格分割,適格合併,適格現物出資,適格現物分配又は適格株式分配)に該当する場合には,下記(2)のとおり譲渡損益の計上を繰り延べる。

また,法人が自己を株式交換等完全子法人又は株式移転完全子法人とする株式交換等又は株式移転(下記(3)の適格株式交換等及び適格株式移転を除く。)を行った場合には,その法人が有する時価評価資産の評価損益を計上する(法62の9)。

(1) 適格組織再編成

① 適格分割とは,次のいずれかに該当する分割をいう(令4の3)。

ただし,分割に伴って分割承継法人又は分割承継親法人のうちいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されないもの(株式が交付される分割型分割にあっては,分割法人の各株主等の所有株式の割合に応じて分割承継法人又は分割承継親法人のうちいずれか一の法人の株式が交付されるもの)に限る。

イ 分割法人と分割承継法人とが100%の持株割合である場合の分割

ロ 分割法人と分割承継法人とが50%超100%未満の持株割合である場合の分割で,次の要件に該当するもの

(イ) 分割法人の分割事業の主要な資産及び負債が分割承継法人に移転していること。

(ロ) 分割法人の分割事業の従業者のうち,おおむね80%以上が分割承継法人の業務に従事することが見込まれていること。

(ハ) 分割法人の分割事業が当該分割後に分割承継法人において引き続き行われることが見込まれていること。

ハ 共同事業を行うための分割で,次の要件(当該分割が分割型分割であり,かつ,当該分割の直前に当該分割に係る分割法人の全てについて他の者との間に当該他の者による支配関係がない場合にはイからハまでに掲げる要件)に該当するもの

(イ) 分割事業と分割承継事業とが相互に関連するものであること。

(ロ) 分割事業と分割承継事業のそれぞれの売上金額,従業者数若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと又は分割法人の役員等のいずれかと分割承継法人の常務以上の役員(特定役員)のいずれかとが分割承継法人の特定役員となることが見込まれていること。

(ハ) 上記ロのイからハまでの要件に該当すること。

(ニ) 分割により交付される分割承継法人又は分割承継親法人のうちいずれか一の法人の株式の全部が分割法人により継続して保有されることが見込まれていること(その分割が分割型分割である場合には,その分割により交付される分割承継法人又は分割承継親法人のうちいずれか一の法人の株式であって支配株主に交付されるものの全部が支配株主により継続して保有されることが見込まれていること。)。

ニ 分割事業を当該分割により新たに設立する分割承継法人において独立して行うための分割で,次の要件に該当するもの

(イ) 分割法人に対する他の者による支配関係がなく,かつ,分割承継法人に対する他の者による支配関係があることとなることが見込まれていないこと。

(ロ) 分割法人の役員等のいずれかが分割承継法人の特定役員となることが見込まれていること。

(ハ) 上記ロのイからハまでの要件に該当すること。

② 適格合併及び適格現物出資とは,上記①の適格分割の要件に準ずる要件に該当する合併及び現物出資をいう(令4の3)。

③ 適格現物分配とは,内国法人を現物分配法人とする現物分配のうち,その現物分配により資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)のみであるものをいう(法2十二の十五)。

④ 適格株式分配とは,現物分配のうち,その現物分配の直前において現物分配法人により発行済株式等の全部を保有されていた法人(完全子法人)の当該発行済株式等の全部が移転するものを株式分配というところ,完全子法人の株式のみが移転する株式分配のうち,上記①の適格分割の要件に準ずる要件に該当するものをいう(法2十二の十五の二,十二の十五の三)。

⑤ 組織再編成の後に適格合併が行われることが見込まれる場合であっても,一定の要件を満たすときは,その組織再編成は適格組織再編成に該当することとされている(令4の3)。

(2) 移転資産等の譲渡損益の計上の繰延べ(62の5)

① 適格分割型分割又は適格合併による資産等の移転は,帳簿価額による資産等の引継ぎとし,譲渡損益の発生はないものとする。

② 適格分社型分割又は適格現物出資による資産等の移転は,帳簿価額による資産等の譲渡とし,譲渡損益の計上を繰り延べる。

③ 適格現物分配及び適格株式分配による資産の移転は,帳簿価額による資産の譲渡とし,譲渡損益の計上を繰り延べる。

(注) 適格分割又は適格合併に該当しない分割又は合併による資産等の移転は,時価による資産等の譲渡とし,譲渡益又は譲渡損は,分割型分割又は合併にあってはその前日の属する事業年度,分社型分割にあってはその日の属する事業年度の益金の額又は損金の額とする。

(3) 適格株式交換等・適格株式移転

① 適格株式交換等とは,次のいずれかに該当する株式交換等をいう(令4の3)。

ただし,株式交換等に伴って株式交換等完全子法人の株主等に株式交換等完全親法人又は株式交換完全支配親法人のうちいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されないものに限る。

イ 株式交換完全子法人と株式交換完全親法人とが同一の者によってそれぞれ100%の持株割合である場合の株式交換

ロ 株式交換等完全子法人と株式交換等完全親法人とが50%超100%未満の持株割合である場合又は株式交換等完全子法人と株式交換等完全親法人とが同一の者によって50%超100%未満の持株割合である場合の株式交換

(イ) 株式交換等完全子法人の株式交換等の直前の従業者のうち,おおむね80%以上が株式交換等完全子法人の業務に引き続き従事することが見込まれていること。

(ロ) 株式交換等完全子法人の株式交換等前に行う主要な事業が,株式交換等完全子法人において引き続き行われることが見込まれていること。

ハ 共同事業を行うための株式交換で,次の要件(当該株式交換に係る株式交換完全子法人と他の者との間に当該他の者による支配関係がない場合にはイからニまで及びヘに掲げる要件)に該当するもの

(イ) 株式交換完全子法人の子法人事業と株式交換完全親法人の親法人事業とが相互に関連すること。

(ロ) 株式交換完全子法人の子法人事業と株式交換完全親法人の親法人事業のそれぞれの売上金額,従業者の数若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと又は株式交換完全子法人の常務以上の役員(特定役員)の全てが退任しないこと。

(ハ) 株式交換完全子法人の株式交換の直前の従業者のうち,おおむね80%以上が株式交換完全子法人の業務に引き続き従事することが見込まれていること。

(ニ) 株式交換完全子法人の子法人事業が株式交換完全子法人において引き続き行われることが見込まれていること。

(ホ) 株式交換の直前の株式交換完全子法人の株主で株式交換により交付される株式交換完全親法人の株式又は株式交換完全支配親法人株式のいずれか一の法人の株式のうち支配株主に交付されるものの全部を支配株主が継続して保有することが見込まれていること。

(ヘ) 株式交換後に株式交換完全親法人と株式交換完全子法人との間に当該株式交換完全親法人による完全支配関係が継続することが見込まれていること。

② 適格株式移転とは,上記①の適格株式交換の要件に準ずる要件に該当する株式移転をいう(令4の3)。

③ 株式交換等又は株式移転後に適格合併等が行われることが見込まれる場合であっても,一定の要件を満たすときは,その株式交換又は株式移転は適格株式交換等又は適格株式移転に該当することとされている(令4の3)。

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