概要

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<通達本文>

法人(次の①から③までに掲げるものに限る。)は,その有する金銭債権の貸倒れその他これに類する事由による損失の見込額として,各事業年度において損金経理により一定の繰入限度内の金額を貸倒引当金勘定に繰り入れることができる(法52①②)。

① 当該事業年度終了の時において次に掲げる法人に該当するもの

ⅰ 普通法人のうち,資本金の額等が1億円以下であるもの(資本金の額等が5億円以上である法人との間に当該法人による完全支配関係がある法人などを除く。)又は資本等を有しないもの

ⅱ 公益法人等又は協同組合等

ⅲ 人格のない社団等

② 銀行,保険会社その他これらに準ずる一定の法人

③ 法人税法第64条の2第1項《リース取引に係る所得の金額の計算》の規定により売買があったものとされるリース資産の対価の額に係る金銭債権を有する一定の法人

(注) 平成23年12月の税制改正により,貸倒引当金繰入額を損金の額に算入できる法人の範囲が上記①から③までに掲げる法人に限定されることとされている。

平成10年度税制改正により,貸倒引当金の繰入限度額の計算に当たって,法定繰入率が廃止されるとともに,従来,通達によりその設定が認められていた債権償却特別勘定を貸倒引当金に含めることとされている。

また,平成13年度税制改正により,貸倒引当金の繰入限度額の計算は,次の(1)に掲げる個別評価金銭債権と(2)に掲げる一括評価金銭債権に区分して,それぞれ繰入限度額を計算することとされている(法52①②)。

なお,同改正及び平成22年度税制改正において,適格合併,適格分割,適格現物出資又は適格現物分配を行い,個別評価金銭債権を移転した場合の貸倒引当金勘定の引継ぎ等について所要の措置が講じられている(25の6等)。

(1) 個別評価金銭債権(令96①) 更生計画認可の決定に基づいて,その有する金銭債権の弁済を猶予されるなどの場合において,その一部につき貸倒れ等の事由による損失が見込まれる一定の要件を満たす金銭債権(以下「個別評価金銭債権」という。)につき,この個別評価金銭債権に係る債務者について生じた次の表の繰入事由の区分に応じた同表の繰入限度額に掲げられた金額(それぞれの繰入事由に応じて,取立て等の見込みがあると認められる部分の金額や実質的に債権とみられない部分の金額を除いてその金額を算定する。)

ただし,上記③に掲げる法人の個別評価金銭債権には,その法人の区分に応じそれぞれ一定の金銭債権(リース資産の対価の額に係る金銭債権など)以外の金銭債権を含まないこととされているため(令96⑨),当該一定の金銭債権に限り,上記繰入事由による貸倒引当金繰入額の損金算入が認められる。

(2) 一括評価金銭債権(令96⑥) 事業年度終了の時において有する売掛金,貸付金その他これらに準ずる金銭債権(個別評価金銭債権を除く。以下「一括評価金銭債権」という。)につき,次の算式により計算した金額

ただし,上記③に掲げる法人の一括評価金銭債権には,その法人の区分に応じそれぞれ一定の金銭債権(リース資産の対価の額に係る金銭債権など)以外の金銭債権を含まないこととされているため(令96⑨),当該一定の金銭債権に限り,貸倒引当金繰入額の損金算入が認められる。

また,上記①に掲げる法人(平成31年4月1日以後に開始する事業年度においては,適用除外事業者である普通法人を除く。)の繰入限度額については,貸倒実績率による計算に代えて,法定繰入率により計算することが認められている(措法57の9①)。

なお,公益法人等又は協同組合等の平成10年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する事業年度においては,この金額に一定の割増率(平成24年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度にあっては112%,平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する事業年度にあっては110%)を乗じた金額が繰入限度額とされているが,この割増特例措置は令和元年度税制改正により次の経過措置が設けられた上廃止されている(措法57の9③,所得税法等の一部を改正する法律(平成31年法律第6号)附則54)。

(注) 貸倒実績率は次の算式により計算する。

*1 売掛債権等とは,売掛金,貸付金その他これらに準ずる金銭債権をいう。

2 分子の個別評価金銭債権の引当金繰入額等とは,個別評価金銭債権の貸倒引当金勘定の金額のうち,当該事業年度終了の時において当該個別評価金銭債権の取立て又は弁済の見込みがないと認められる部分の金額を基礎として法人税法第52条第1項の規定により計算される個別貸倒引当金繰入限度額に相当する金額に達するまでの金額の合計額(売掛債権等に係る金額に限る。)をいう。

3 分子の個別評価金銭債権の引当金戻入額とは,その各事業年度又は各連結事業年度で益金の額に算入された貸倒引当金勘定のうち,その直前の事業年度又は連結事業年度において個別評価金銭債権の貸倒引当金勘定として損金の額に算入された金額の合計額(その各事業年度又は各連結事業年度において,貸倒損失の額が生じた売掛債権等又は個別評価金銭債権としての貸倒引当金勘定として繰り入れる売掛債権等に係るものに限る。)をいう。

4 分子の合併法人等が引継ぎを受けた貸倒引当金又は期中個別貸倒引当金の戻入額の合計額とは,適格合併の日の前日又は適格現物分配に該当する残余財産の全部の分配に係るその残余財産の確定の日の属する事業年度の損金の額に算入された貸倒引当金勘定の金額及び適格分割等の日の属する事業年度の損金の額に算入された期中個別貸倒引当金勘定の合計額(貸倒れにより損失の額が生じた売掛債権等又は個別評価金銭債権の貸倒引当金勘定又は期中個別貸倒引当金勘定として損金の額に算入された売掛債権等に限る。)をいう。

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