概要
<通達本文>
(1) 自己の製造等に係る棚卸資産の取得価額は,法人税法においては,その棚卸資産の製造等のために要した原材料費,労務費及び経費の額(製造原価)にその棚卸資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した費用の額を加算した金額とされている(令32①二)。
すなわち,実際原価によるものとされている。したがって,法人の算定した原価の額が実際原価と異なる場合には,その棚卸資産の取得価額は実際原価に修正しなければならない。
(2) 法人の算定した原価と実際原価との差額がいわゆる原価差額であり,原価差額には原価差損(法人の算定した原価が少額の場合)と原価差益(法人の算定した原価が多額の場合)とがある。しかし,法人の算定した原価の額が適正な原価計算に基づいて算定されている場合には,法人の算定した原価の額をもって法人税法上の取得価額とみなされる(令32②)から,この場合には原価差額は生じない。法人の算定した原価の額が適正な原価計算に基づいて算定されているかどうかは,法人の種類,業態,規模等の実情に応じ,一般に実施されている原価計算の方法によって算定されているかどうかにより判定することになるが,特に原価差損については,その差額が少額でない場合には調整すべきものとされている。なお,法人税基本通達においては,原価差損を原価差額としてとり上げその取扱いが定められている。
(3) 原価計算基準によれば,実際原価計算制度において原価の一部を予定価格等をもって計算した場合における原価と実際発生額との間に生ずる差額,標準原価計算制度において標準原価と実際発生額との間に生ずる差額を原価差異としている。
そして,実際原価計算制度における原価差異は,材料受入価格差異を除き,原則として当年度の売上原価に賦課し,材料受入価格差異は当年度の材料の払出高と期末在高に配賦することとし,標準原価計算制度における原価差異は,数量差異,作業時間差異,能率差異等であって異常な状態に基づくと認められるものは非原価項目とし,それ以外のものは実際原価計算制度における処理の方法に準ずることとされているようである。しかし,税務計算上は,法人が原価の算定につき実際原価計算制度によっても標準原価計算制度によっても,その算定された原価に原価差損が生じ,それが少額でないときは全て原価差額の調整をすべきこととされている。
(4) 原価差額の調整は,原価差額を期末在高と払出高に応じて区分し,期末在高に対応する金額をその法人の算定した評価額に加算し修正することである。
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