認知症患者が有する預貯金の無断流用と不当利得返還請求債権の相続(1-1-2(26))
<問>
平成28年に第一次相続で,長男甲が亡くなりました。
長男甲は,平成27年に自宅を新築しました。長男甲の母乙は認知症を発症したため,平成26年から特別養護老人ホームに入所しました。入所当時の母乙の介護認定は要介護4でした。
長男甲は母乙の郵便局の通常預金を預かっており,平成27年9月に自宅を新築する際に,キャッシュカードで一日当たり50万円を引き出して,合計550万円を自宅の建築資金の支払に充てました。
長男甲の妻の話では,上記の引き出しについて,長男甲は,母乙の承諾を得ていなかったとのことです。
長男甲は,甲の単独所有で上記の自宅を平成27年に登記しています。長男甲の相続税に申告の際には,平成27年9月における母乙の通常預金からの自宅の建築資金の引き出し額550万円(以下みなし贈与財産550万円と記載します。)については,甲の乙からの預かり金として甲の相続財産において,債務控除はしていません。
また,現在まで,母乙から甲へのみなし贈与財産として,受贈者を甲とする贈与税の申告もしていません。甲の相続税の申告については,甲の相続財産1億4千万円は,全て妻丙が相続したため相続税の納税額はありませんでした。
平成30年3月に第二次相続として,母乙が亡くなりました。
母乙の相続人は,長男甲の代襲相続人である,甲の長女丁と二女戊の二人です。平成27年分の母乙から長男甲への,相続税法9条のみなし贈与財産になると考えています。このみなし贈与財産550万円のみ,今回の母乙の相続財産が減少していることになります。
そこで,母乙を贈与者とし,長男甲を受贈者として,平成27年分でこの550万円の贈与税の申告が必要となるでしょうか(本税の納税額58万円)。長男甲は,母乙の相続開始時点での相続人ではありませんし,母乙から長男甲へ相続された財産もありませんので,三年以内贈与加算の対象とはならないと考えています。
この場合の贈与税の申告は,準確定申告の所得税の申告と同様に,長男甲の相続人である妻乙と長女丁と二女戊がそれぞれ法定相続分で,この58万円の贈与税を納付し,贈与税の準確定申告の付表を添付して申告することになるのでしょうか。
すでに亡くなっている長男甲の相続人が,甲に代わって贈与税の申告をして,贈与税の納付をすることに違和感があり,申告を躊躇していますが,やはり申告すべきでしょうか。
認知症に罹患していて意思能力が著しく低下している母乙名義の預………
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