遺留分減殺請求者が取得した不動産のうち遺留分相当額を超える価額の清算金を支払った場合の課税関係(1-1-11(25))

※ 本コンテンツは刊行日時点の情報に基づくものです

<問>

被相続人Aは,養子甲にすべての財産を相続させる旨の遺言書を公正証書により作成していました。養子甲は,その遺言に従って現金預金を取得し,すべての土地建物について甲名義に変更しました。

乙が,弁護士を通じて遺留分の減殺請求をしましたが,申告期限までに話合いがまとまらず,甲が全部の財産を取得した内容で相続税の申告書を作成し,1人で申告書を提出し相続税額の納付をしていました。

今回相続開始から2年近く経過したところで,甲と乙の間で合意書が交わされました。

<合意書>

甲と乙とは,甲において被相続人Aの死亡により相続した,後記物件目録記載の土地建物(以下「本件不動産」という)を含む被相続人Aの全遺産に対する,乙の遺留分減殺請求に伴い以下のとおり合意する。

第一条 甲と乙とは,乙の遺留分減殺請求により,乙が本件不動産を含む被相続人の全遺産につき,四分の一の割合による持分権及び所有権を取得したことを確認する。

第二条 甲と乙とは,遺産分割協議により,乙が本件不動産を取得し,甲がその余の被相続人の遺産を取得したことを確認する。

第三条 乙は,甲に対し,乙が第一条の遺留分減殺請求により取得した遺留分の価額と前条により乙が取得した本件不動産の価額の差額金〇千万〇〇円を清算金として支払う義務があることを確認する。

第四条 甲は,乙に対し,平成27年11月末日限り,前条の清算金の内金〇千万円支払を受けるのと引換に,本件不動産について平成26年8月〇日付遺留分減殺請求を原因とする所有権移転登記手続をし,移転登記に必要な本件不動産の権利証並びに甲の印鑑証明書及び委任状を交付する,なお,右登記手続費用は乙の負担とする。 二 乙において,期日までに前項の金〇千万円の支払をできないときは,第二条の遺産分割協議は当然にその効力を失うものとする。

第五条 乙は,甲に対し,第三条の清算金の内金〇百万円〇〇〇円を平成29年12月末日限り甲名義の銀行口座に振り込んで支払う。支払いを遅滞したときは,平成30年1月1日以降支払い済みまで年一割の遅延損害金を支払うものとする。

第六条 第四条二項により本合意が効力を失ったときには,甲は乙に対して遺留分として金〇千万〇〇〇円の支払義務があることを確認し,速やかに本件不動産を売却して支払うものとする。

この合意書に基づき指定されている不動産を減殺請求者の乙が取得し,清算金の支払いをしました。

第一条の本件不動産を含む被相続人の全遺産につき,4分の1の割合による持分権及び所有権を取得の確認とありますが,遺留分相当額よりも本件不動産の価額が高額なため,その差額を第三条にある清算金を支払うことで調整をしています。

そこで,この清算金を譲渡所得における譲渡対価として取り扱うべきか,相続税における代償金として扱うのが妥当かについて疑問を生じました。

譲渡所得の観点からみれば,遺留分の減殺請求によりその不動産の10分の6の持分を遺留分として取り戻し,一旦共有状態となった後に共有状態を解消するために,残りの10分の4相当を甲が乙に譲渡したものであると考えることができます。

もう1つの考え方としては,遺留分減殺請求がなされた時点で共有関係となり,協議を待つまでもなく権利関係が確定するといっても実際には減殺請求者と被請求者間で返還する範囲の確定や価額弁償金の決定について協議することになるので,返還についての協議を遺産分割協議としてとらえて,その合意に達して,遺産分割が成立したと考えた場合には,この清算金は遺産分割協議で決定された代償債務と考えても差し支えないものと思われます。

この清算金の取扱いについて,いずれと考えるべきかについてご教授ください。

(全文 文字数:1362文字)

ご質問の事例の場合の合意書に基づく遺産の分割に係る課税に関し………

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