会計不正の構造【file 06】工事進行基準を使った利益前倒し計上

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・タイプ(不正の種類):工事進行基準の悪用

・業種・業態:ソフトウエア開発

・手法・手口:①労務時数を使った仕掛品過大計上

②工事進行基準が適用される工事に,同じ手口を使って売上原価過大計上と売上過大計上

今回はソフトウエア開発を手掛ける会社で行われた不正を取り上げる。一事業部の構成員全員が共謀して,事業部利益をよくみせるために,仕掛品の過大計上及び売上原価の過大計上等を行った事例である。在庫の過大計上という手法は,利益のかさ上げで使われる手法であるが,それ以外に,工事進行基準が適用される作業の原価を多めに計上することで事業部売上高まで過大計上させていた。

1.会計不正の概要

(1)会社の状況(概要)・取引形態

この会社の業態はソフトウエア開発である。原価計算は個別原価計算を採用していた。

(2)不正の構造

不正が行われたのはソフトウエアを開発する事業部である。不正の具体的な手法は,労務時数の振替であった。ある課長の指示があるまで課員の多くが日報への時間入力を行わず,その指示に基づき仕掛中のソフトウエアに時数の振替を行った。期間費用になる工数からも入力指示されたプロジェクトに振り替えるようになった。

工事...