緊急解説 IASBによる新収益認識基準の発効日の延期の暫定合意

有限責任あずさ監査法人 パートナー 川西 安喜

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はじめに

国際会計基準審議会(IASB)は2015年4月28日に開催されたボード会議において新収益認識基準の発効日を1年延期することで暫定合意した。本稿ではこのIASBの暫定合意について解説する。

背景

IASBの新収益認識基準である国際財務報告基準(IFRS)第15号「顧客との契約から生じる収益」は,米国財務会計基準審議会(FASB)との共同プロジェクトの成果として2014年5月に公表され,2017年1月1日以後に開始する事業年度から発効することとされた 。2013年2月にこの発効日を議論した際,IASBは,最も古い比較期間の期首までにシステムが変更できることが望ましく,企業によっては損益計算書を3年分表示することを考慮し,2017年1月1日以後に開始する事業年度から発効することとした。

IASBとFASBは,それぞれの新収益認識基準を円滑に導入するための移行リソース・グループ(TRG)を共同で立ち上げた。TRGは,4度の議論を通じ,多くの論点を解決したものの,一部の論点はIASBとFASBが検討することになった。その結果,ライセンスの会計処理を限定的に改訂し,履行義務の識別の設例を追加する...