書評 竹村純也・遠藤元一著 『会計不正 平時における監査役の対応』

(LABO刊/本体4,200円+税)

青山学院大学大学院 教授 八田 進二

( 46頁)

いつの時代にあっても無くなることのない会計不正に関して,昨今,過去の事例分析および会計不正を見抜くための手法等を解説した書籍が相次いで刊行されている。ただ,ここで取り上げる書籍は,「監査役が会計不正への対応がより深度をもって行えるようにすること」で,会社の中で「会計不正に巻き込まれた人を救ってほしい」との著者たちの熱いメッセージが込められた会計不正対応本である。

まず,第1章では,現行の監査役監査は会計不正の問題に対して必ずしも十分に対応できていないとの問題意識の下,「資産の不正流用」と「不正な財務報告」を包含する会計不正に対応すべき必要性が監査役にあることを明確にしている。会計不正の発生に関しては,「当社には会計不正は発生しない」「会計不正の発生可能性が低い」「会計不正のサインは見つけられる」といった誤解を解消するとともに,会計不正を発見するための手続を監査役監査に組み込むことの必要性を指摘している。この不正発見の手法として,本書では,「仮説検証アプローチ」を提唱するとともに,第2章において,①情報の収集,②情報の分析,③仮説の構築,④仮説の検証の4つのステップから成る本アプローチにつ...