シリーズ「学生と語る会計基準」 西川教授のポイントレッスン! 第1回 資産負債アプローチと収益費用アプローチ

慶應義塾大学商学部 教授 西川郁生

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会計学を専攻する木村太一君は教授陣から「優秀」の判を押される大学院生。そんな木村君が今日も西川教授の研究室を訪ねます。ときには教授を唸らせる質問で始まる2人の会話から,会計基準の本質が見えてくるかも!?

時価会計と包括利益

木村君 IFRSの特徴として時価会計志向と包括利益重視がよく挙げられますが,IFRSにおける資産負債アプローチの採用がそれらの特徴を解く鍵になりますか?

教授 IASB自体は時価会計志向や包括利益重視を否定していますね。現在のIASB議長はその特徴は神話に過ぎないと言ってきました。その一方で,資産負債アプローチを否定する発言は何もしていませんから,まず資産負債アプローチから考えていきましょう。

利益の算出方法

木村君 時価会計志向や包括利益重視に結びつかない資産負債アプローチがあるのかということですね。

教授 資産負債から何をどう見るかについて考えましょう。利益の計算方法は,資産負債アプローチと収益費用アプローチでどう違いますか?

木村君資産負債アプローチでは,資本取引による増減を除いたうえで,期末の資産負債のネットの額が期首からどれだけ増減したかという額ですね。収益費用アプローチはある...