東芝事件から何を学ぶか 第1回「ガバナンス」 (全5回)

青山学院大学大学院 教授 町田 祥弘
関西大学大学院 教授 松本 祥尚

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株式会社東芝(以下,東芝)が行った粉飾決算は,収益認識にかかる会計不正,監査委員会を中心に形骸化していたガバナンス,不正を発見できなかった外部監査人,内部統制報告の内容とは裏腹に機能していなかった内部統制といった多岐にわたる問題を露呈したという点で,今から14年前にアメリカで発覚したエンロン(Enron)社の粉飾事件との類似性を指摘できる。筆者は, 本誌3222号 (2015年7月27日号)において,「東芝の不正な財務報告問題の論点整理 -何が問題で何を問うべきなのか-」を掲載したが,編集部からのご依頼により,今回から5回にわたって,会計,監査,ガバナンスのそれぞれの問題点について改めて検討し,東芝事件から何を学ぶべきかについて述べていくこととしたい。

1.何が問題だったのか

東芝は,2002年の商法改正によって委員会等設置会社(現在の指名委員会等設置会社)を選択することが認められると,早速2003年6月に委員会等設置会社に移行した,ガバナンスに積極的に取り組む企業として位置付けられてきた。

実際に,東芝の取締役会の構成の推移を纏めてみたのが [図表1] である。

〔図表1〕 東芝における取締役会の推...