東芝事件から何を学ぶか 第2回「会計」

青山学院大学大学院 教授 町田 祥弘
関西大学大学院 教授 松本 祥尚

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1.何が問題だったのか

今回の株式会社東芝(以下,東芝)による,累積1,500億円を超えるいわゆる粉飾決算の発覚は,証券規制当局である証券取引等監視委員会に対する内部通報が切掛けとされ,2015年2月12日の工事進行基準案件等に関する 金融商品取引法26条 に基づく当該委員会からの報告命令に端を発する。つまりは,社内における又は内部統制による自発的な対応ではなく,外部からの指摘による点は留意する必要がある。

東芝では,工事進行基準案件等に関する検査に同社として対応するため,取締役会長,監査委員たる社外取締役,執行役2名及び社外の専門家2名からなる「特別調査委員会」による自己調査を実施したところ,一部のインフラ関連における収益認識基準としての工事進行基準の適用に問題が発見された。

社内対応に限界を来し,東芝は,同年5月8日に,日本弁護士連合会のガイドラインに基づく「第三者委員会」を設置し,工事進行基準の適用の適切性の検証を委嘱することとなった。しかしその後,新たな会計基準に違反する会計処理が検出されたため,3つの委嘱事項が追加され,この結果,第三者委員会が明らかにすべき会計基準適用上の争点は以下の...