スペシャル・インタビュー ASBJ小野行雄委員長に聴く! 会計基準開発の現状と今後の展望

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ASBJ 委員長 小野 行雄

<はじめに>

Q 委員長に就任されてから約1年半になりますが,ASBJの委員長の感想をお聞かせください。

A ASBJの委員長になる前は,監査に従事していましたが,大きく環境が変化しました。ASBJの仕事は監査と同様に地味な仕事も多いですが,国内の基準開発にせよ,国際対応にせよ,一つ一つの仕事の結果が我が国の多くの関係者に大きな影響を与えることとなり,ASBJの委員長の責任の重さを痛感しています。

我が国の会計制度は,現状,ある意味で過渡期的な状況にありますが,その中で,ASBJの果たすべき役割は多いと思っています。

<税効果会計>

Q 日本基準の開発の中で,7月に公開草案を公表した「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」について,今回の見直しのポイントを簡単にお話しいただけますか。また,作成実務,監査実務への影響についても教えてください。

A 日本公認会計士協会が税効果会計に関する実務指針を作成してから15年あまり経過し,その間,これらの実務指針はそれなりに実務に根ざしてきました。これらの実務指針をASBJに移管し見直しを行うことは,実務に大きな影響を与えるため,現在,ASBJとして重点的に取り組んでいます。

今回公表した公開草案の一つ目のポイントは,日本公認会計士協会の監査委員会報告第66号(以下66号という)における会社を5つに分類する取扱いを踏襲したことです。審議の過程では,IFRSにはこのようなガイダンスはなく,また税効果会計導入当時には必要であった実務の円滑化の役割は終わったので,撤廃すべきであるとの意見が聞かれました。ただ,これを撤廃する場合には実務への影響が非常に大きいと考えられるため,当面,5つの分類を残すこととしました。IFRSの我が国の導入の進展などにより,将来的に,見直すことがあるかもしれないと思っています。

二つ目のポイントは,分類2,分類3の分類の要件を見直したことです。

分類2及び分類3ともに,66号では分類の要件について,経常的な利益(損益)という会計上の利益を基礎にしていました。これが公開草案では,課税所得(臨時的な原因により生じたものを除いた)に基づく要件に変更する提案を行っています。これは,利益が計上されていても,必ずしも課税所得があるわけではなく,将来の課税所得の十分性を検討するためには,課税所得を基礎にしたほうがよ...