IFRSをめぐる動向 第78回 IFRS第15号 公表後のIASBの議論

PwCあらた監査法人 公認会計士 井上 雅子

( 42頁)

1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。そこで,今回は,第75回に引き続き,2014年5月に公表された国際財務報告基準第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下,IFRS第15号)に関して,その後に行われているIASBとFASB(以下,両審議会)の議論について,取り上げます。

IASBは,昨年5月,FASBと共同でIFRS第15号を公表し,この適用を円滑に進めるための方策として,FASBと合同で収益認識移行リソースグループ(以下,TRG)を創設しました。TRGは,新たな収益基準の導入によって生じる実務上の諸問題についてメンバーの見解を共有し,両審議会に対してその内容を伝えることを目的としており,継続して議論を行っています。

両審議会は,これまでに行われたTRGの議論を踏まえ,異例ともいえる,未だ強制適用前の基準に係る改訂について検討を行うとともに,今年7月,発効日の1年延期を決定しました。これにより,IFRS第15号は,2018年1月1日以後開始する事業年度から強制適用となります。...