Q&Aコーナー 気になる論点(141) IASB概念フレームワークの公開草案(7)

―実質優先とその判断―

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が,2015年5月28日に公表した公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」(IASB概念フレームワークED)では,2010年の改正の際に削除した実質優先(substance over form)の記述の復活を提案していますが,その場合の「実質」とは何を指すのでしょうか。

IASB概念フレームワークEDにおいて,忠実な表現は,ある経済現象の単なる法的形式に関する情報ではなく,その実質に関する情報を提供するという記述の追加を提案していますが,その場合の「実質」について明確にはしていません。

<解説>

実質優先(1)‐1989年公表のIASC概念フレームワーク

IASBの前身の国際会計基準委員会(IASC)が1989年に公表した「財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」(1989年公表のIASC概念フレームワーク)は,2001年に組織されたIASBによって引き継がれ,採用されてきていました。

1989年公表のIASC概念フレームワーク24項において,質的特性とは,財務諸表が提供する情報を利用者にとって有用なものとする属性をいうとし,以下の4つを主要な質...