IASB公開草案「IFRS第15号の明確化」の解説(後編)

有限責任あずさ監査法人 公認会計士 大津 喬章

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本稿では,前編に続き,国際会計基準審議会(IASB)が,2015年7月30日に公表した公開草案「IFRS第15号の明確化」(以下「本公開草案」)の解説を行う。

1.ライセンス

(1)知的財産ライセンスの性質の判断

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の適用指針は,企業の有する知的財産のライセンスに関して,具体的な要求事項を定めている(IFRS15.B52-62)。ライセンスは,契約で約束された他の財またはサービスと別個のものである場合,そのライセンス供与の性質に基づいて,次のように処理することとされている

ライセンス供与の性質 処理
ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産に アクセスする権利 収益を一定期間にわたり認識する
ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を 使用する権利 収益を一時点で認識する

IFRS第15号は,上記に示した,企業の知的財産に「アクセスする権利」に該当する要件として,次の3つを定めている(IFRS15.B58)。

ライセンスを供与する際の企業の約束の性質は,以下の要件のすべてに該当する場合には,企業の知的財産にアクセスする権利を提供するという約束である。...