ハーフタイム 疎外された経理部

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名門企業の東芝は,2008年以来累計1,500億円以上の利益を前倒し計上していた。その原因は,すでに各方面から種々指摘されているが,ここでは同社経理部のあり方を考える。第三者委員会報告書によると,「GAAPを尊重し,不正会計は絶対許さない」という東芝グループ行動宣言とは裏腹に,経理部の地位は低く,GAAPに反する会計処理を強いられた。

まず,決算内容はほぼ企画部が決めていた疑いがある。車に例えれば,営業部はアクセル,経理部はブレーキだ。財務部も経理部も,管理会計を通じて内部統制機能を発揮し,健全決算に貢献するのが期待される機能だったはずだ。ところが,営業部と経理部の間に,管理部とか企画部が介在していたため,経理部が営業部から直接情報を収集・分析し,損失引当金設定の必要性を判断する機能を発揮させなかった。

例えば,ロスコン(2億円以上の損失が発生している案件)の抽出手続きでは,まず企画部が案件を選別し,営業部または管理部の同意を取り付けたうえで,企画部担当者ははじめて経理部担当者に連絡していた。「受注工事損失引当金調査票」を作成するのは経理部担当者であるが,単なる事後処理センターであった。損...