東芝事件から何を学ぶか 第5回「資本市場」

青山学院大学大学院 教授 町田 祥弘
関西大学大学院 教授 松本 祥尚

( 12頁)

1.何が問題だったのか

2015年9月7日,株式会社東芝(以下,東芝)は,リーマン・ショック以降の過去7年分,総額2,248億円に上る利益数値の修正を行ない,その後,14日に2015年4~6月期の決算を発表した。このため証券取引等監視委員会による本格的な調査は,15日以降に開始されることなった。本来,3月決算企業の継続開示においては,金融商品取引法24条1項に基づき,6月30日が有価証券報告書の提出期限であるが,特に内閣総理大臣が承認することを条件に提出期限の延長が2度にわたり認められていた。

一方,東京証券取引所(以下,東証)は,上場廃止にするのではなく,有価証券上場規程第501条に基づき,上場を継続させながら内部管理体制の改善を促す「特設注意市場銘柄」に9月15日付けで指定するとともに,上場契約違約金9,120万円を徴求した 。(同様に,名古屋証券取引所からも,特設注意市場銘柄への指定と上場契約違約金1,740万円を徴求されている。)

この結果,東芝は,原則として1年後に「内部管理体制確認書」を提出し,今般の事件の原因となった内部管理体制の問題点が改善されたかどうかの確認を受けることとな...