Q&Aコーナー 気になる論点(144) IASB概念フレームワークの公開草案(10)

-認識の中止と損益計算-

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が,2015年5月に公表した公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」では,資産に対する支配の喪失があっても,認識を中止しないことがあることを提案しています。これは,なぜなのでしょうか。

EDでは,支配アプローチにより認識の中止を行うことにより,資産・負債の変動を忠実に表現しないおそれがあるとしています。これは,損益計算の観点に(当期純利益への反映)おいて適切ではない場合があることによると考えられます。

<解説>

認識の中止の会計処理の考え方(1)‐DP

現行のIASB概念フレームワークにおいて,認識の中止(derecognition)は定義されておらず,また,いつ認識の中止が生じるべきなのかも記述されていません。このため,IASBが2013年7月に公表したディスカッション・ペーパー(DP)「財務報告に関する概念フレームワークの見直し」では,企業が資産・負債の構成部分を留保する場合の認識の中止について,[図表1]の2つのアプローチを示していました(BC5.53項)。

[図表1]

アプローチ概要支配アプローチ認識の中止は,単に認識のミラーイメージであるた...