ハーフタイム 戦後70年と金融不安定性

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中国元の切下げとFRBの利上げ予想に加えて,世界経済の停滞懸念が広がり,最近の金融市場は著しく不安定となっている。エコノミストのこれから先の予測は自信なげである。自信たっぷりの予測は眉唾物にみえる。このように未来の展望が難しい時は,どのように対処したら良いのだろうか。第1に思いつくのは,E・H・カー『歴史とは何か』がいうように"過去と現在の対話"を試みることである。まず戦後70年を振返ってみよう。最初の四半世紀は実に安定していた,少なくともそう見えた。アダム・スミスのいう"見えざる手"によって経済の調和は保たれ,不況はケインズ政策によって克服されると信じられた。欧米に比べて貧しかった高度成長期のわが国では"明日は今日よりも暮らしは楽になる"と無邪気に信じられた。ところが,1971年のニクソン・ショック,ブレトン・ウッド体制の崩壊によって世界経済は激動の時代に突入した。360円/$だった為替相場も,年率4%だった金利も毎日変動するようになり,企業の事業計画も個人の将来生活設計も立てにくくなった。取得原価主義・実現基準で十分だった会計は,時価または公正価値測定を必要とするようになった。物価...