金融会計の論点シリーズNo.6 金融資産・負債の認識中止(下)

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに

シリーズNo.4( 本誌No.3231 )とNo.5( 本誌No.3232 )では,金融資産・負債の認識中止に係る国内基準とIFRSを比較してきた。そこでは,個別財務諸表段階の論点を対象にしていたが,先の金融危機における大規模な認識中止は,SPEを使う証券化の形で行われており,連結ベース認識中止のほうが問題は大きい。IFRS9号(B3.2.1)の認識中止に係る判断のフローチャートでは「SPE連結」が前提となっているが,金融規制が強化されるにつれて金融技術は日進月歩し,逆に財務情報の透明性は低下する恐れがある。金融技術といっても,規制を逃れるための小手先のテクニックがほとんどであるが,会計とは無関係だと割り切るわけには行かない。よって,このシリーズNo.6にて掲げたい目標は,まず証券化の仕組みをレビューし,金融危機を招くような大きなリスクが発生したメカニズムを再確認すること。次いでSPEの使用実態を知ることによって金融資産・負債オフバランスシート化の問題点をより一層鮮明にしたい。

証券化の意義と仕組み

証券化(securitization)の対象資産は2つある。一つは不動産であるが,不動産そ...